湖国伝統野菜「弥平とうがらし」。承継者が挑む新たなチャレンジとは。

滋賀県湖南市下田地域で100年以上前から伝わる湖国伝統野菜の「弥平とうがらし」。何とも言えない辛味と独特の清涼感をもつこのとうがらしを活かして、チリソースやスパイスを製造販売する株式会社fm craic(エフエムクラック)。

10年前に創業したこの会社のバトンを2021年1月に引き継ぎ、現在の代表を務めるのは地域おこし協力隊の釘田和加子(くぎたわかこ)さんです。

創業者が0から作り出した商品を引き継ぎ、全国に広めるために数々の施策を打ち出す、釘田さんのお話を伺いました。

脱サラOL2人が意気投合して、農業の分野で事業を模索

株式会社fm craicは10年前、全く農業経験のない当時会社員だった、佐々木由珠(ささきゆず)さんと三峰教代(みたかゆきよ)さんがスタートした会社です。

左から創業者の三峰さん、後継者の釘田さん、創業者の佐々木さん

滋賀県が開設した職業訓練コースの1つ、「アグリファーム」で出会った2人は、食や農業に関連する仕事に就きたいという共通の思いを抱いていたのがきかっけで意気投合。とうがらしは比較的女性でも扱いやすく加工もできることから、この伝統野菜「弥平とうがらし」を扱いはじめます。

当時は市の特産品を積極的に売り出す流れがあり、また脱サラOL2人という話題性も手伝って、自治体などが協力し活発なPR活動が行われたようです。

その後、創業者の2人と後継者の釘田さんのご縁は、思わぬところで繋がります。

創業者と釘田さんを結びつけたキーワードは「海外」

2018年から湖南市の地域おこし協力隊の釘田さんは、元々他の協力隊が起業をサポートするためのコーディネーター業務を行っていました。とても海外好きな釘田さんは、インドでの就労経験もあることから、インド人の方と共にヒンディー語講座をしており、そこに創業者の佐々木さんが来てくれたそうです。

海外志向という共通の考え方、また釘田さんがインド料理に「弥平とうがらし」を使用するなどしてお互い交流がスタート。そこから創業者の佐々木さんにお子さんが出来て手が足りない際にはお手伝いするといった、関係性になっていきました。

三峰さん「夏しっかり働いて冬に1〜2ヶ月ガッツリ休む。そういった海外の人のような働き方、ワークライフバランスを目指していたんです。少し不純かもしれなけれど、農業がめちゃくちゃしたかったわけではなく、あくまでもそういった働く姿勢やスタイルの確立が動機としてもともとありました」

釘田さんは、そんな考えにもとても共感したそうです。

ゼロイチの「想い」を受け継ぐ

出会った翌年の2019年冬頃、釘田さんのもとに相談が舞い込みます。創業者である佐々木さんの旦那さんの転勤で神奈川行きが決まり、「会社をたたむか」「後継者を探すか」迷っていると。

釘田さん「協力隊として起業支援こそ行っているものの自分で起業した経験は当然なく、もともと自分も事業を運営してみたいという思いがありました。そして何より2人が10年かけて、全くのゼロから創り上げてきた『弥平とうがらし』のブランドを何とか残したい、そんな気持ちが強くありました」

三峰さん「釘田さんだから、後継者としての相談をしました。海外志向、お客さんに対する考え方、全てにおいてとても感覚が合うと思っていました」

ここでも、釘田さんと佐々木さんと三峰(みたか)さんの結びつきを強めたのは海外というキーワード。そんな運命的なご縁を通して出会った「弥平とうがらし」とその創業者の想い。最初に事業承継の話を頂いてから不安な想いもあり半年ほど考え、地域の方々の応援もあり釘田さんは翌年の2020年春頃、その「想い」を絶やさぬよう受け継ぐことを正式に決めました。 

この美味しさを、みんなに知ってもらいたい

メディアにも取り上げられ、良いものであることはお墨付きの「弥平とうがらし」。味わってもらえれば、確実にお客さんを虜にする高い商品力をもっていることが強みです。自分用でもお土産用でもすごく気に入ってもらえます。

釘田さん「うちのホットチリソースを愛用してくださる方がいて、何にでもかけて食べちゃって1週間に1瓶使ってしまわれるほど、どハマりしてくださってて。でも本当に何にでも合うんです。ピザはもちろん、シチューとかホワイト系にはピッタリ、あと餃子なんかもあいますよ」

しかしどうやったらもっと多くの人に「弥平とうがらし」を味わってもらえるか、が悩ましいところ。現在は市内の「道の駅」をメインとした卸先が販売チャネルの中心で、その他はネット販売です。購入いただいた方にリピートをいただくのはもちろんですが、今後は新しい方にもっと「弥平とうがらし」をまずは知ってもらう必要があります。

釘田さん「今までは、『脱サラOLが立ち上げた・・・』といった創業者2人の面白いストーリーもPRにおける魅力の1つでしたが、私が承継した今、創業者さんの想いは引き継ぎつつも、自分の色を出していく必要があると感じています」

踏み出した、商品のリブランディング

釘田さん「実は今、デザイナーさんとロゴとかパッケージのリニューアルをはかってます。メインのターゲットが30~50代の大人の女性なんですが、アプローチとして、彼女たち一人ひとりの時間を大切にする存在になれたらなと思ってます。

とあるお客さんのエピソードなんですが、その方ママさんなんですけど、普段は子供のことを考えてカレーだったら甘口をつくるんです。でも自分は辛いカレーが食べたいんですよ。そんな時 ” 自分のため ” に、うちのインディアンスパイシーを使ってもらってるんです。忙しくても自分をちゃんと大切にする、そんなお手伝いができたらって」

そこには釘田さんの独自の目線や、特別な想いがあります。より幅広い層に受け入れてもらえるように現在リブランディングを進めています。新しいロゴも完成しパッケージデザインも9月中には完成するようで、それに合わせて新商品も開発したり遠方の方にも購入できるようにネットショップをリニューアルされるそうです。

自身が何もかも決めて、自身の「想い」もしっかりのせた「弥平とうがらし」、期待と不安が混じりつつも承継後に行うこの大きなチャレンジには目が離せません。

弥平とうがらしの需要を増やしていきたい

釘田さん「会社として弥平とうがらしの加工品をメインに扱っているのは湖南市内にうちだけなんです。頑張って製品を売っていかないと、弥平とうがらしの需要を増やすことはできません」

創業者から受け継いだ株式会社fm craicだけでなく、湖南市拠点での「弥平とうがらし」全体の存続も背負っている釘田さん。そんな弥平とうがらしを守る為にも釘田さんはこう続けます。

釘田さん「弥平とうがらし全体の市場を盛り上げる為に、他の事業者にも若者向けに激辛とか違うターゲットで参入してきて欲しいくらいです。そして何よりそうやって他の方も参入したくなるような、魅力的な業界に自分がしていきたいとも思いますね。」

そうやって笑いながら素直に話をしてくださる釘田さんの目からは、弥平とうがらしの未来を背負っていく覚悟と力強い意志が感じとれました。

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湖国伝統野菜「弥平とうがらし」。承継者が挑む新たなチャレンジとは。