OA機器販売から笑顔で働ける環境を。倒産危機を救った4代目社長の大変革

「『働く』に笑顔を!」をコンセプトに、人財採用や生産性向上、セキュリティ対策などさまざまな経営課題解決に取り組むWORK SMILE LABO。実は会社のルーツは文房具店。筆や墨などを販売する石井弘文堂として1911年に創業されました。

2015年に代表取締役社長に就任した石井聖博さんは、当時倒産寸前の経営難に陥っていた状態からV字回復を実現。どのような思いで後継になり、経営危機を救ったのかを伺いました。

「後継は楽」そんなイメージは入社初日で崩れた

石井さん「学生時代は会社を継ぐことはほとんど考えていませんでしたね。ちょうど就職活動を始める直前に父から『将来どうするんだ?』と聞かれ、当時就職氷河期だったこともあり、『家には戻った方が楽そう』と安易な考えで跡を継ぐことを決めました(笑)。

まずは修行ということで、取引先のOfficeの業務を快適化するOA機器メーカーに就職し、東京で3年半働きました。営業としての成果もわりと出せている最中、父から『戻ってこい』と言われ2006年の2月に岡山に戻り、『WORK SMILE LABO』の前身である『石井事務機センター』に入社しました」

石井事務機センターは当時、オフィス器具やOA機器などを販売していました。「後継は会社で働くよりも楽」という石井さんがなんとなく抱いていたイメージは、初日から崩れることとなります。

石井さん「入社初日に社員から言われた言葉は『辞めたいんですけど』でした。社員の入れ替わりは激しく、やる気や覇気なども一切感じられない。上層部の社員でも、お昼からパチンコは当たり前。『本当にこの会社、大丈夫なのか?』と初日から不安になったことを今でも覚えています。そんな状況を少しでも良くしたいと思い、私は目の前にあるミッションをとにかく頑張ってこなそうと考えていました。

入社後2年間は営業として働き、お客さんや社内のメンバーとの関係を徐々に構築。後継として次に必要なのは経営スキルだと思い、後継者育成スクールにも通っていました。会社にも慣れてきて『よし、後継者として頑張ろう!』と思ったタイミングで父に呼び出されたんです」

父から言われた「会社畳むから、自分で働き口を見つけて」

WORK SMILE LABO・石井聖博さん

代表であるお父様の口から出たのは「倒産」の二文字。石井さんは驚きとともに、後継者でありながらも会社の状況に全く気付かなかったことに情けなさと不甲斐なさを感じました。100周年を目前にし「潰してはいけない」と感じた石井さんは、なんとか事業継続できないか模索します。

石井さん「銀行からはもうお金は貸せないと言われていたので、とにかく赤字を出さないよう全社員で営業活動を行いました。少しでも早く手元にお金が入るよう即納品、即回収と鬼のように働いていましたが、それでも支払いが回らない時には個人口座からお金を出してしのいでいましたね。そしてついに手形が落ちなくなった2011年、第三創業地の建物と土地を売却し危機を免れます。

今でも忘れられないのは、売却地を掃除したこと。もちろん掃除を依頼するお金はないですし、だからといって社員に頼むわけにもいきません。毎日仕事が終わった後に弟と二人で片付けを行いました。あの時は体力的にもかなりキツく、本当に辛かったですね。

土地売却で残ったお金はたった300万円。本来、その300万円も返済に充てなければいけませんが、このまま自転車操業をしていてもいつまでも状況は変わらない、そう思って銀行に掛け合い新事業のための資金に回しました」

「ただ物を売るだけではなく、自社にしかできないサービスを生み出したい」そう思い、石井さんが新たに始めたのが、IT担当者のいない中小企業に定額でIT周りのサポートを行う「パソコンパトロール」というサービスです。

石井さん「当社の取引先はほとんど中小企業です。お客様と話している中で、ITに詳しい人が自社にいないという課題を見つけ、このサービスを始めました」

ちょうどマイナンバー制度が始まるタイミングだったこともあり、業績はV字回復。しかし、そんな最中でまた新たな問題が発生します。

石井さん「すごく頑張ってくれていた女性社員が倒れてしまったんです。これまで、とにかく売上を上げることだけに注力してきましたが、事業継続のためには会社自体を変革させなければいけないと感じました」

私たちが売っているのは商品ではなく、「笑顔で働ける環境」だ

OA機器やオフィス家具販売を通し、「笑顔で働ける環境を提供している」と気付いた石井さんは、「中小企業の笑顔溢れるワークスタイルモデルカンパニーになる!」というビジョンを掲げ、会社名を「石井事務機センター」から「WORK SMILE LABO」に変更。さまざまなITツールやツールをまずは自社で活用し、良い事例をお客さんに提案する「創造提案業型」、さらに本社をショールームとした「来店体験型」のビジネスモデルを確立させました。

そうすることで、ただ機器を売るだけではなく「テレワークをしたい」「人事評価をITで管理したい」などご要望や悩みをトータルで解決でき、かつ機器も一緒に販売できるようになったのです。

石井さん「ショールームにお越しくださるお客さんは、『これが欲しい』ではなく『こうしたい』と言ってくださります。『こうするためにはいくらかかるのか?』というコミュニケーションはありますが、受注に至るまで、製品の話はほとんどしません。これまでのOA機器やオフィス家具など『モノ』に頼っていたビジネスモデルから脱却し、WORK SMILE LABOでしかできない価値を提供できるようになりました。

また、来店体験型のビジネスモデルは営業の受注率平準化、粗利向上など会社の売上にとってもプラスの作用が働きました。今では働き方改革を行いたいという中小企業のお客さんが、岡山県内だけではなく全国からお越しくださります」

どんな逆境でも自分ごととして捉え挑戦するのが「事業継承」

石井さん「事業継承は、創業者の思いやこれまでの文化、負の遺産なども全て引き継がなければいけません。後継になった直後は、なぜ自分で借りたわけでもないお金を返済しなければいけないんだ、なぜ自分で採用したわけでない社員に怒られるんだ、なんて思うこともありました。でも、そんなことを言っていても何も始まらないんです。

事業を継続させるためには、迫りくる困難をどうプラスに変えていくか、考え続けることが大切です。創業者が作ってくれた地域のブランドや仕入れ先との関係性など、プラスの要素は探せばたくさんあります。それをどう生かすかは自分次第です」

新型コロナウイルスの影響でテレワークや在宅勤務が一気に加速したことで、ITスキルやテレワークのノウハウを持たない中小零細企業と、大企業の差が大きく開いてしまったと話す石井さん。今後は、全国に5000社ある事務機屋さんに対して、WORK SMILE LABOのノウハウを横展開する事業に力を入れ、岡山のみならず全国の中小企業の働き方のサポートに乗り出すそう。「100年続く会社として少しでも社会貢献をしたい」そう話される石井さんの今後の取り組みと活躍に期待です。

WORK SMILE LABO HP

文:佐原有紀

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