コンサルタントから銭湯の経営へ。「これからの銭湯は、古いアイテムと新しいアイテムの融合だ」

廃業・休業した一般公衆浴場・銭湯を引き継ぐ事業を行っているニコニコ温泉。元々のオーナーと賃貸契約を結び、オーナーに家賃を払いながら、売り上げ、コスト、利益を管理・運営しています。

社長の真神友太郎さんはサラリーマン時代、風呂事業のコンサルタントとして働いていましたが、次々と廃業していく銭湯を目の当たりにする中で「これは、何かやりようがあるんじゃないか」と5年前に独立して現在の事業を立ち上げました。

真神さんに、地元密着型の銭湯についての想いを聞いてみました。

多い時には週に2〜3件が廃業。業界の現状を目の当たりにして銭湯の事業承継を決意

ニコニコ温泉・真神友太郎さん

真神さん「もともと、10年以上コンサルタント会社で働いていました。そこで手がけていたのはお風呂の事業、大型の温泉や旅館のコンサルです。内容は、温泉の立ち上げの計画作りや業績アップの手伝いなど幅広く関わっていました。当時会社としては、銭湯の事業は手がけていなかったですね。

しかし、縁があって個人的に銭湯からの相談は受けていました。そんなある時、知り合った銭湯が廃業してしまいました。銭湯は景気に左右されやすく、一番多い年では、1週間で2〜3件廃業することもあったのですが、どんどん銭湯が廃業していくのを目の当たりにして『なんとかしたい』と自分で事業を起こすことを決意しました。

もともと、独立を考えていたタイミングと重なったこともあり、コンサルタント会社でお風呂に関する事業を経験していることや、銭湯という小さい規模からスタートできることが身の丈にあっていると思い、銭湯の事業継承を事業に決めました」

『日帰り温泉やスーパー銭湯を手掛けませんか?』という声も掛けられますが、今の会社の規模を考えると断っているそうです。

50年以上の歴史を持つ銭湯の再生事業には、想定を上回る苦労の連続が

古きよき銭湯に関わるからこその苦労もあると言います。

真神さん「銭湯は50年以上経っているものがほとんどで、建物・設備・機械がとにかく古いんです。廃業、休業するきっかけは、機械がどうしようもなくなってギブアップされることも多いのですが…本当によく壊れます(苦笑)。

配管やいたるところで水漏れ、お湯漏れと毎週どこかしら壊れています。壊れることを想定はしていましたが、想定を上回るペースですね」

この状況に対処するためには、真神さんは設備への投資と投資回収のための経営を続けています。

真神さん「まずは直さないといけない場所は直して、それ以上の収益をあげて投資回収していきます。これは他の事業にも言えることですね。しかし、銭湯特有の事情があるとしたら、効率よく作られた設備ではなく、50年の歴史の中で『やっつけ、やっつけ』で設備をその都度直してきたケースが多々あります。

たとえば、これが一般的なスーパー銭湯だと、機械を置くスペースがしっかりあって、配管もシンプル、水の循環の仕組みをひと目で確認できる。一方都市部の銭湯だと、土地が狭い中に無理矢理設備を作って、50年間やってきているから配管が複雑過ぎるんです。さらに、お湯の流れも見えません。お湯の流れを突き止めるまでに半年以上もかかることもありますが、実は未だに全部の流れが分からないケースもあるんです」

3つやっている銭湯のうち2つは、未だにすべての配管系統を把握できていないそうです。事業を引き継ぐ際に、元の番台さん(風呂屋で入口にいる見張りの高い台に座っている人)自身も構造について知らない部分もあるほどなんだとか。苦労は続きます。

営業時間と組織づくりが銭湯の売上を伸ばすポイント

設備への投資を回収するために、真神さんは組織作りと営業時間に着目しています。

真神さん「家族経営をしている銭湯は、実は重労働で大変なんです。浴場清掃や機械のメンテナンスなど肉体的にもきつい。そこで承継後は、組織としての継続性を考えて、従業員に体力的にも無理をさせないようにしています。元気な組織に作りかえているので、お客さんの数は比較的伸びていきます。

また、やりがいや夢を持った人が組織に入ってくることも多く、従業員のやりがいを維持することを意識しながら組織づくりを考えています。私が工夫しているのは、従業員から出てきたアイデアは責任を持って、やりきってもらうってことですね。従業員の中には『将来、銭湯を経営したい』という若者もいるんですよ」

真神さん「そのほか、売り上げを増やすためにやっているのは、営業時間の拡大です。一般的な銭湯はだいたい15時〜23時前後までが営業時間なのですが、早朝から営業したり、オールナイト営業したり、土日営業したりすると、お客さんを獲得する間口が広がり利益が上がります。

家族的な経営から、バイトさんを雇ったりして組織経営に変えていくんです。売り上げを伸ばすポイントは、営業時間を広げることと、組織作りをすることだと思っています」

地方の銭湯を引き継ぐために、銭湯以外のサービスへの展開も模索

現状、比較的人口の多い都市部での事業承継がメインのニコニコ温泉。地方からの依頼も来ますが、そこには課題があります。

真神さん「都心部や東京など人口が比較的多い場所で、黒字にすることができると思った銭湯を引き継いでいるのが今の形です。ただ、引き継いで欲しいと依頼が来るのは地方が多いんです。このコロナ禍でさらに依頼は増えています。

地方だと銭湯のまわりの人口が少なく、それに対して利益をあげる仕組みが完成していないのが今の私たちの課題です。地方だと1日お客さんが20人以下とかもあるんですね。

そこに事業継承して、投資しても売り上げが伸びない。売り上げが伸びない中で利益を増やすために収益の拡大をどうするか思案中です。お風呂のお客さんだけでなく、それ以外のサービスへと繋げたりできないかと考えています」

そのほか、極端なケースだと若者が少ない地方もあります。運営側も若者を雇うことが難しいため、電子マネーが導入できないなど、組織運営の課題もあるんですよと真神さん。

古いアイテムと新しいアイテムの融合に向けて

真神さん「実際、コロナの前までは売り上げも上がっていましたが、コロナ禍でお客さんが大きく減りました。銭湯は、健康商売なので、売り上げに対する利益率はもともとそんなに大きくありません。全体の売り上げに対して10〜15%くらいの利益を見込んで運用しています。

ただ、コロナ禍で、お客さんの数が15〜20%減っているので、今は赤字が続いている状態です。ならすとなんとか黒字ではありますが・・・借入金がある中でどうにかやっていかないといけないので。

なかなか回収計画通りに進まないことに苦労しています。コロナの前に比べるとお客さんの伸びは明らかに鈍化しています。

この事業を立ち上げてから5年、営業時間を延長したことで客層が多様化してきています。家族客から若い人・女性・男性と多種多様。コロナ前までだと、客数は2〜3倍に増えました。

ただ、コロナ禍でお風呂客だけでは成り立たないことに気づかされました。これまでは出来上がっていた『これをやれば利益が上がる』というスキームがコロナで変わってしまったんですよ。

そこで、最近はコロナ禍で事業戦略を変更しないといけなくなっているので、銭湯とは違う業界の視察に時間を使っています。会社立ち上げ時は視察も兼ねて銭湯によく行っていましたけどね。

客層の多様化を生かすためにも、地方の銭湯を引き継ぐためにも、お風呂のお客様だけを増やしていくというこれまで通りのやり方では通用しなくなってきたので、どうやって生き残るかという視点で、別業界を視察しています」

次世代まで継続させるために新しいものを入れたり、昔からあるものと融合させたり、生き残るための工夫、努力がこれからの課題ですと真神さん。

お風呂のお客様以外の獲得に向けて、どんな取り組みを仕掛けていくのか、ニコニコ温泉のこれからの取り組みに今後も目が離せません。

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