アパレル業界からの転身!日本唯一の「有明海産初摘み海苔専門店」を承継しストーリーを紡ぐ

食のプロが本物の材料を求めて訪れる街、東京・合羽橋。さまざまな調理器具の店が並ぶこの地に、「ぬま田海苔」の4代目である沼田晶一朗さんは、2018年5月に実店舗をオープンしました。

17年間勤めた大手アパレル企業から転身し、家業を継いだ沼田さん。「有明海の初摘み海苔のおいしさをきちんと伝えたい」と語る沼田さんに、これまでの経緯や想いを伺いました。

アパレル業界から一念発起して海苔業界を継承

ぬま田海苔 代表取締役 沼田晶一朗さん

学生の頃にずっと憧れていた「Gap Japan(以下、Gap)」にアルバイトとして入り、社風に惹かれてそのまま社員として入社した沼田さん。全国各地で店長の経験を積み、やりがいを持って働いていましたが、家業の海苔専門店を72歳の母親が一人で切り盛りしていることがずっと気になっていたと言います。

沼田さん「母は3代目なのですが、店舗は縮小傾向で最後は実店舗は持たずに一人で電話とFAXで注文や配送の対応をしていました。『母が楽しく続けられる環境を整えてあげたい』という想いが芽生え、実店舗をオープンしたいと思うようになりました。

けれど、まだアパレルに未練があって……2018年3月にGapを退職して5月に店をオープン。4代目を継いだのは2019年12月でした。海苔屋を営む中で、本格的にやろうと覚悟が決まりましたね」

SNSは、店の入り口

「note」では、沼田さんが自身の言葉で情報を発信している

母親の負担を減らすために、2017年の冬からオンラインショップをスタートしていた沼田さん。一気にいろいろなことをやろうとせず、一つずつ確実に、本当に必要なことだけを丁寧に進めていきました。

沼田さん「7歳年下の弟が、オリジナルのレザーアイテムのブランドをやっているので、店舗経営についてはいろいろ相談できて本当に助かっています。パッケージのデザインやWEBサイトのフォローをしてもらっていて、逆に売り場の経験は僕の方が多いので、足りない部分を補い合っている感じです。

また、TwitterやInstagram、noteなどのSNSの活用は、店舗でいうと呼び込みをすることと同じ。noteでは自分の想いや体験したことなどを綴っていますが、Instagramでの発信は、弟の会社に委託しています。全て自分でやると提案が似てしまいますが、何かを誰かに任せたほうが、違う層にも届いて、広がっていくと思っています。SNSは店の入り口でもあります。間口は広く、多くした方がいいと実感しています」

 生産者たちのストーリーを伝えることもミッション

川の水がたくさん流れこんでくる湾は、真水の割合が高くなることで、柔らかい海苔が育つという(画像提供:沼田さん)

「ぬま田海苔」の強みは、日本で唯一の「有明海産初摘み海苔専門店」であるという、シンプルかつ斬新なスタイルを貫いているところ。

沼田さん「うちもそうですが、かつて海苔の生産が栄えていた神奈川県・川崎には、舌の肥えた人が多く、彼らを納得させることができたのが、有明海の初摘み海苔でした。有明海と東京湾は形状が似ていて、山のミネラルが川を流れて大きな湾に行き着くという自然界の仕組みも同じなんです。栄養をたっぷり吸収しながら育つ希少な初摘み海苔だからこそ、かつての江戸前の海苔の味を再現できたのだと思います。

有明海の初摘み海苔は、11月の終わりの1、2週間しか獲れず、そのタイミングで1年分の海苔を仕入れなければいけません。一度の買い付けで1年分を仕入れるのは、プレッシャーもあるといいます。

沼田さん「買い付けは売り上げを左右する大きな仕事なので、失敗は許されません。しかし、初摘み海苔の味を現地で確かめると、そのおいしさを実感し、自信が持てます。また、生産者と直接話すことで、こちら側の想いも伝えることができるし、生産者たちのストーリーも聞くことができる。そうすることで、お客様に海苔のおいしさだけでなく、その背景もしっかり伝えることができるんです」

10枚2000円の海苔の価値

店舗ではそれぞれの商品の背景を教えてもらいながら、試食することができる

「ぬま田海苔」の商品名は、「鹿島第一壱◯2(かしまだいいち いちまるに)」「 芦刈壱重1(あしかり いちじゅう いち)」など化学式のような文字が並びます。

沼田さん「海苔には漁場と等級があって、うちの商品名は『漁場+等級』そのままの名前で表現しています。例えば、『鹿島第一壱◯2』は、鹿島第一という漁場で獲れた『壱◯2』という等級の海苔となります。

うちでは10枚入り2000円の海苔などを販売しています。『高すぎる』と感じる方もいますが、なぜそんな値段になるのかという背景をきちんと説明し、実際に試食したらその味に納得するお客様が多いです。

また、海苔業界のためにという使命感もあります。海苔のシングルオリジンを打ち出していくことで、どういう人たちがどういう背景で初摘み海苔を作り、どういう食べ方だとおいしくいただけるのかなど、丁寧に伝えていけたらと思っています。

希少な海苔にはそれに見合う対価が必要です。高い値段で落札したことで、漁師さんたちの刺激にもなっているようです。現地でうちの店が口コミで広がって、海苔業界が休みに入る夏に九州からわざわざ合羽橋まで足を運んでくれた漁師さんもいました」

海苔のことを深く知ることができる店づくり

アパレル業界での経験が長いこともあり、店の内装にもこだわりがうかがえます。

沼田さん「アパレルショップだと、マネキンに洋服を着せてコーディネートで見せたり、ラックにかけてカラー展開をわかりやすくしたりと、『このスタイリングをマネしたい』『この色を着てみたい』などイメージ力と購買欲に訴えかけていました。海苔の販売もまったく同じで、『こんな食べ方をしたらおいしそう』『ごはんと一緒に食べたい』といったイメージ力と食欲に訴えかけるようにします」

商品スペースは、ただ並べるのではなく、商品横に食べ方の提案と食欲をそそるようなイメージ写真を添えています。また、中央には「ぬま田海苔」を代表する海苔を並べ、ゆったりとスペースを確保することで、商品のストーリーを伝えやすくしています。

さらに入り口近くには、海苔の生産背景を学べるスペースがあり、沼田さんが有明の漁場を独自取材した資料や写真を展示。初摘みの種付け作業を手伝った時に撮影した写真もスライドで流れ、現地の臨場感が伝わります。

合羽橋の実店舗で伝えていきたい本当のおいしさ

店内では、乾海苔をその場で焼いて、香ばしい味わいを体験することができる

今はネットで何でもすぐに買える時代。それでも調理器具の店が並ぶ合羽橋という場所に店を構えたのは、「食に対して意欲が高い人たちに、有明海産初摘み海苔の味を知ってもらいたい」という想いが強かったからだといいます。

沼田さん「合羽橋に足を運ぶ人は、食のプロか、料理や食べることが好きな人。そして、よりよい商品を自ら選び、その背後にあるストーリーまでをも知ることに価値を見いだす方が多いと感じてこの場所を選びました。

また、今はコロナ禍の影響もあり、海外からの客足は減っていますが、合羽橋に訪れる外国の人は、日本のいいものを求めていて、実際に海外への発送も増えています。国内だけでなく世界への展開も念頭に、先代より受け継いできた本当においしい海苔を発信していきたいです」

店舗はもちろんオンラインショップでも購入できる「ぬま田海苔」の有明海産初摘み海苔。そのおいしさを、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか?

ぬま田海苔ホームページ

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文・久保田亜希

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