九州を代表する人気アイス「ブラックモンブラン」が関東地区でも食べられる?!攻めと守りの姿勢で取り組む5代目の挑戦

昭和2年設立、佐賀県小城市に拠点を構える「竹下製菓株式会社」は、九州を代表するアイス「ブラックモンブラン」をはじめとした、人気商品を多数製造しています。

アルプス山脈の最高峰「モンブラン」からインスピレーションを受け誕生した「ブラックモンブラン」は、誕生から60年近く経つ今も多くの人々に愛され、今やその人気は全国区に。

5代目社長の竹下真由さんは、2011年に東京から佐賀県に戻り、父であり現会長である竹下敏昭さんから事業を継承しました。最高峰の山のように脈々と続く伝統を引き継ぐ親子承継のストーリーや、5代目として新たなチャレンジを続ける竹下さんにおはなしを伺いました。

幼少期から抱いていた、事業を継承したいという想い

竹下製菓株式会社 代表取締役社長 竹下真由さん

物心ついた頃から、先代である祖父や父が守ってきたこの会社が大好きだったという竹下さん。事業を承継する決意は、いつ頃からあったのでしょうか?

竹下さん「幼少期からお菓子を作ることも好きでした。だけどそれ以上に、友人たちが竹下製菓のアイスやお菓子を嬉しそうに食べている様子を見るのが大好きでした。『人をハッピーにする仕事ってすごい!』と幼心に感じていたので、私が竹下製菓を継ぎたいと思っていました。しかしなかなか父から継いで欲しいと言われなかったので、本当に継がせてもらえるのだろうか?と不安でしたね (笑)

高校に進学するときに、父から『佐賀でビジネスをすることを考えているなら、県内の高校に進学して欲しい』と言われ、そのときに初めて継がせようと思ってくれているんだなと、父の想いを知って嬉しく思ったのを覚えています。東京の大学に進学する際には、東京で経験を積んだら佐賀に戻って、竹下製菓に入社したいという強い気持ちを持って佐賀を離れました」

経営の悩みを気軽に共有できる環境こそ家族承継のメリット

佐賀県鹿島市辺りで、当時まだ珍しい西洋菓子を売り歩いていたのが、竹下製菓の原点(写真は佐賀市に移った後)

大学卒業後は、竹下製菓以外の会社を知りたいという想いのもと、コンサルタントの会社に就職。体力的な部分も含めて若いうちに自分の限界値を把握しておくことも大切だと考え、数年間とにかくがむしゃらに働いたと語ります。東京の会社で働くことを決めた理由のひとつに、一緒に地元に戻り事業をサポートしてくれるパートナーに出会えるといいなという想いもあったそうです。

竹下さん「地方の中小企業にとって、人材を育てるのも獲得するのも大変なことだと思っています。同じ考えを持った右腕になるような人材を育てようと思うと、なお大変です。それが都市部との大きな差だと思います。事業を継ぐのは私ですが、1人でできることには限界があるので、いかに自分1人ではない環境を作れるかが家族承継の鍵だと思いました」

代理店による戦略的な営業展開。2019年には東京・高円寺にある銭湯「小杉湯」にて開催された、ラジオとのコラボイベント「ブラックモンブランの湯」

現在は、夫であり副社長の雅崇さん、父であり会長の敏昭さんと共に経営を行っており、3人体制のメリットは大きいと言います。

竹下さん「3人で業務の手分けができるというのは、かなり大きな強みですね。会社を経営する上でとても重要な地元の取引先とのお付き合いなどは引き続き会長に、埼玉県の子会社は副社長にお願いしています。分担することで、私は新しい関係性への種まきや新規ビジネスへの時間を確保することができました。

事業をする上で悩みはあって当然ですが、その悩みを共有できる相手がいないのは辛いだろうなと思います。私の場合は、父も夫もいるので、経営者としての孤独感は少ないのかなと思います。身近な人に気軽に相談できることも家族承継のメリットのひとつですね」

攻めと守りを同時に行った、リスクを回避するためのM&A

2020年10月には、埼玉県にあるアイスクリーム製造工場のM&Aを行った竹下製菓。今まで九州をメインに製造・販売されていたブラックモンブランなどの主力商品が、全国区になるという情報はSNS上でもとても話題になりました。このタイミングでM&Aに行ったのには、3年前の豪雨による災害で工場が浸水、躯体設備が被害を受けたことが影響しています。

竹下さん「九州は災害が少ないと言われていますが、台風や地震などで、類似業種が被災している様子を見ると、拠点が1つしかないことは危険だなと思いました。どのような理由であれ、市場から商品が一度消えてしまうと、また供給できるようになっても、竹下製菓の商品を並べられる場所がなくなってしまっている可能性もあるんだと思ったときに、リスク回避のためにM&Aを決めました。

今はまだ佐賀と埼玉の製造量の割合は、10:0です。これから0から1にすることはとても大変だと思いますが、その準備ができていれば1を2にすることはスピード感を持って対応できると思っています。現在はそのための準備を行っているところです」

おみやげ用に開発された「ブラックモンブランクランチチョコレートバー」

今までは、スーパーなどに並ぶ流通菓子がメインの製菓事業でしたが、近年は「ブラックモンブランクランチチョコレートバー」をはじめとした、おみやげ用の商品にも注力している竹下製菓。この戦略には、どのような想いがあったのでしょうか?

竹下さん「アイスだけではなく菓子のポートフォリオを増やしていく、違うチャネルでのブランドを活かしていきたいというのが狙いです。お土産問屋を開拓して、空港や駅に商品を並べていました。このコロナ禍でそちらの売り上げは落ちてしまいましたが、それまでの1年間は大健闘してくれていました。

最近の私たちの経営戦略に対して、攻めているねと言われることもありますが、私は守るための攻めだと思っています。リスクを回避するため、商品を安定して供給するため、より長く会社を続けていくために必要なことをしているつもりです。でも守るだけでは投資の意味がないので、長く続けていく上で今やっておかなければならないこと、そして攻めの一手にも使えることを判断の基準にしています」

女性社長という立場から見た事業承継の課題

現在社長業をしながら、3人のお子さんを育てている竹下さん。女性社長として、親子承継を経験したなかで、感じたことがあると言います。

竹下さん「私の子どもは上から、女の子、女の子、男の子の3人なんですが、末っ子が生まれたときに、やっと跡継ぎが生まれてよかったねと言われることが多々ありました。すでに女性の私が継いでいるにも関わらず、やはりまだ世間は男性が事業を継ぐものという考えが根強いんだなと思いましたね。家族、親族で事業承継をする上でもそうですが、これからの時代は性別にとらわれず、誰でも活躍できるように、ジェンダーバイアスをなくしていくべきだと思っています。

今は女性が継承する事例が少ないことで、メディアに取材していただける機会もありますし、役目をいただけることもあります。埋もれてしまって日の目を浴びることができないよりも、どんなきっかけもチャンスに変えられる方がいいですよね。そこを含めて、女性である私が事業を継いでよかったなとポジティブに考えています」

竹下製菓の商品を通じて、たくさんのハッピーを届けたい

東京から戻り、今年で10年目を迎える竹下さんに、事業に対する想い、そしてこれから先の目標を聞きました。

竹下さん「竹下製菓が、いつの時代も人をハッピーにする商品を作っていることを誇りに思っています。私も子どもの頃から、もっと美味しい、そしてもっと楽しい商品を作ってたくさんの人に喜んで欲しいという気持ちをずっと持っていました。その気持ちは大人になった今も変わりません。この仕事が家業で本当に幸せだなと思っています。

今後は拠点も増えるので、多くのみなさんに竹下製菓の商品を食べていただけるよう、営業努力を重ねていきます。これから先も、今までと変わらずたくさんの人にハッピーをお届けすることができると嬉しいです」

今回の竹下製菓の親子での事業承継から、家族で事業を守り続けるためのヒントを学ぶことができました。次の世代が安心してバトンを受け取れるように、事業承継に関してもジェンダーに対する考え方をアップデートする必要があるでしょう。新たな拠点から始まる、さらなる取り組みにも注目です。

文:ユウミ ハイフィールド 写真:篠原隆人

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