老舗和菓子屋の後継に名乗りをあげた元工場長。試行錯誤で次のステージを目指す

昭和7年創業「田園調布あけぼの」は、大田区田園調布で80年続く老舗の和菓子屋です。代々受け継いでいるこだわりの自家製あんこと、季節感を大切にした数々の商品で、田園調布を中心に地元の人たちに愛されています。

現在運営を行っているのは、4代目の内田吉昭さん。元は「田園調布あけぼの」の工場長だった内田さんが後を継いで3年、事業承継までの経緯と今後の展望を伺いました。

突然降って湧いたような承継話

内田さんがお店を受け継いだのは3年前。工場長として働く内田さんにとっては、突然降って湧いたような話だっと言います。

内田さん「先代が亡くなり一時は2代目が復帰しました。しかし、今後は親族を含め承継してくれそうな候補者がおらず、お店をやってみないかとお話をいただんです。はじめは悩みましたが、後を継ぐ人がおらずに店が無くなってしまうことが惜しかったので、私がやってみましょうとお店を継ぐことになりました」

こうして2018年にお店を承継した内田さん。工場長として働いていたころには分からなかったことも次第に見えてきて、経営者としての新たな苦労があったと言います。

内田さん「まず経営を建て直さなければいけませんでした。無駄なところから手を付けていき、今は商品の見直しを勧めている最中です。承継するときの約束の中で書面になっていないこともあって、今になって困ることも出てきました。事業承継で相続する場合には、しっかりと書面に残すなど対応しておくことが大事だったと感じています」

気づいたところから改善していく日々

商品を作る側から経営する側になり、様々な景色が変わったという内田さん。業務量も増え、奥様と協力しながら取り組みを進めていきました。

内田さん「同じようなことをしてもお店が続かなかったので、改革をしないとダメでした。改革には痛みも伴いどうしてもギャップが出るので苦労しましたね。元々のお店スタッフさんは辞めてしまいました。でも日々気づいたところから徐々に改善をしていきました。

今は店舗内の雰囲気はだいぶ変わったと思います。商品など経営状態は改善してきています。人に関してはまだまだ大変な部分もあります。いちばん難しいですね」

お客様に必要とされるお店でありたい

「田園調布あけぼの」を承継してから3年が経過し、承継当時からの忙しさは相変わらずあるものの、最近になってようやく自分の心に余裕が出てきたと内田さんは言います。そして改善を続けてきた事業にもやりがいを感じています。

内田さん「やりがいはあります。やったことに対して絶対に結果が出ますからね。新商品をどんどん出しているわけではありませんが、パッケージだったり見せ方など、ひとつひとつの商品の見直しをしています。お店を継いでからは商品の販売と経営を中心にやっていて、重点的にお店をみんなで一緒に改革していました。ここまでの3年間でお店の改革はほとんど出来たと思うので、今度は工場側にまわり商品の改善をやっていこうと考えています」

事業承継をしてからのさまざまな改革のなかで、実際にお店にやってくるお客さんからは、お店の雰囲気が変わったと言われることが増えたそうです。

内田さん「必要とされるお店でありたいですよね。お客さまと接客するときの会話も、以前よりもフレンドリーになってきました。業務的に頼まれたものを梱包して『はい、どうぞ』を繰り返すよりは、ひとりひとりのお客さまとしっかりと接客する形になっていると思います。接客を楽しみにしてくれるお客さまもいます。これは接客を丁寧にやるようになった結果だと思います」

ここからが次のステージのはじまり

このコロナ禍もあって、「田園調布あけぼの」では、さまざまなことにも力を入れ始めています。

内田さん「このコロナ禍では以前よりもお客様が来るようになったかもしれないです。遠出をすることが難しいので、地元の商品を買いに来るようになったんじゃないかと感じています。うちも今後はネットを使った販売でも需要を伸ばすべく力を入れようと検討を始めています。

また以前よりも1世帯ごとの人数の変化もあって、一日で買われた商品すべて食べられないこともあるので、今日食べて残った分を明日も食べられるように、日持ちするような和菓子にも力を入れています。でももちろん和菓子は、その日に買ってその日に食べるのが一番美味しいんですけどね」

内田さんは大変なスタートだった事業承継後、ときに家族と喧嘩したこともあったそうです。それでも事業承継後にかかえていた不安要素について、ようやく目処がつきそうだと言います。

内田さん「どうなるか分からないことが一番不安だったので、これから次のステージがはじまります」

地元に愛されている老舗の和菓子屋のさらなる飛躍に期待です。

文・望月大作

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