安芸高田市の地域おこし協力隊員が、存続危機の地元ミニスーパーを承継

広島県安芸高田市は、広島県の北部の都市。中国山地の自然が豊かな盆地にあり、戦国時代に毛利元就が居城にしていた郡山城があります。歴史と文化のある山間部です。

「フードショップたけだ」は、安芸高田市で20年以上も愛されてきたお店です。2017年に、創業者である竹田隆さんから第三者の森本真希さんに事業承継されました。

今回はフードショップたけだを引き継いだ森本さんからお話を伺ってきました。

地域おこし協力隊のメンバーが、承継に手を上げた

森本さんはもともと地域おこし協力隊。任期が残り半年になってから、先代と出会ったことが引き継ぎのきっかけだったと話します。

森本さん「フードショップたけだは、気軽に立ち寄れるミニスーパーのようなお店でした。小さな食品店ながら、生鮮品から、お菓子、飲料、さらに日用品も揃います。地元のお年寄りには無くてはならないお店として、重宝されていました。

しかし先代が70歳になり、日々の仕事がきつく感じるようになったそうです。息子さん二人がいるものの他の仕事があり、継がれませんでした。せっかくここまでやってきて閉店したら、お客さんはがっかりすると、先代は言っていました」

たまたま、同じビル内の隣に安芸高田市の観光協会があり、お店を継がないかと声をかけられたのが、森本さんの同期である地域おこし協力隊員でした。その当時、森本さんは、協力隊として農業関係のサポートをしつつ、観光協会にも顔をだしていたことから、すぐに引き継ぎの話を紹介してもらったそうです。

森本さん「このまま安芸高田市で暮らしていきたいと考えていたので、地域で生業ができる竹田さんの話に魅力を感じました。最初は飲食店も検討しましたが、初期投資がかなりかかり難しい。その中で次の一手を検討していたとき、渡りに船と思いました」

子育てをするなら、安芸高田市。

お店が入る駅直結の商業施設で、安芸高田市の所有です

安芸高田市に森本さんが住みたいのには、理由がありました。

森本さん「もともと子育てをするなら安芸高田市が良いと考えていました。私の両親が安芸高田市の出身で、子どものころ何度も遊びにきて、ここの良さを知っていたからです。子どもが小学校に入学する2010年に、千葉県柏市から、故郷の広島県に戻ってきました。

しかし仕事が見つからず、取り敢えず広島市でアルバイトをしてチャンスをうかがっていたんです。その後地域おこし協力隊に応募して採用となり、2015年に子どもと安芸高田市に移住しました」

経験ナシでの事業承継。不安を2人3脚で支えるのは

事業承継をするにあたり、森本さんに不安な面もあったそうです。

森本さん「かつて、お店の付近の人通りが多く、賑わった時代もあったようです。しかし人口減少に加えて、自動車が中心の暮らしになると、駅前が寂しくなってきました。遠くには大型スーパーや近所にはコンビニもあり、駅直結といえども経営は簡単ではなかったようです。列車は多くて1時間1本程度ですから、あまり乗降客には期待ができません。

しかし、昔馴染みのお客さんがここを応援していたのです。この信頼関係は先代が築いてきたものなので、私に務まるか不安もありました。サラリーマン家庭に育ち、サラリーマン経験しかなく、心配な面は少なくありませんでした」

そんな不安な中でもお店を引き継ぐことができのたは、先代からの手厚いサポートがありました。

森本さん「その中でも先代に当面サポートしてもらえると言っていただき、心強かったです。実地で学び、細かいことまで教えてもらい、商売のイロハを身につけました。おかげさまで今では商売については、成長できたと思います」

地域おこし協力隊の残り半年の任期中は、このような事情なら、研修としてお店を手伝いなさいと安芸高田市の担当者から背中を押され、仕入れや配達の見習いからお店での研修を始めたそうです。

現在でも精肉コーナーをサポートする先代の竹田さん

森本さん「そして2017年3月に協力隊を終えて、スタッフとして働きはじめます。3か月間、みっちり経営のノウハウをたたき込まれました。運営のオペレーションなど経営者の目線で竹田さんから教えていただきました。そこではじめて、事業者の方向けの納品が安定収入になっているかなどの内情もわかり、気持ちが少し楽になったのを覚えています」

商工会の許認可手続きに竹田さんに付き合っていただくなどして、遂に2017年6月に事業承継しました。

先代や家族のサポートもあって商売人に成長していった

事業承継をきっかけに、生活も大きく変わったそうです。

森本さん「広島県出身の夫は、私たち親子が広島県に戻った後も関東に残り、別居が続いていました。しかしこれを機会に、安芸高田市で合流して、一緒にお店をすることになったんです。お店での肉の担当が夫になり、つきっきりで先代が教えてくれました。もともとフードショップ竹田はお肉が新鮮だということで、指名買いも珍しくないほど人気ラインナップです」

旦那様は脱サラして、先代から肉の特訓を受けました

小さなお店であっても経営者として関わると、これまでのサラリーマン時代とはまったく見える世界が違うと森本さんは言います。

森本さん「自分のやり方で、売上が上にも下にもなるので、楽しみでもあり怖くもあります。責任が重い分、やりがいにもつながっていきました。もともと地域おこし協力隊で来たので、駅前以外からも知り合いが買い物に来てもらえたのが嬉しかったです。知人の紹介から、たまたまそこから売上につながったこともありました」

地域課題をくみ取った、愛されるお店を続ける

その後、2020年からお店は新しい展開を進めているそうです。

森本さん「夫は道の駅から出店のお誘いがあり、現在はそこで肉屋をやっています。売上も順調に伸びてきました」

店内の商品を少しずつ減らしてスペースを作ります

森本さん「夫が道の駅に移ったため、正直駅前のこちらは人手が足りなくなってきて…。やはり3人体制が望ましいのです。ならばと発想を変えて、逆にこちらの駅前店舗の売り場面積を減らすことにしました。

売り場を減らした分、座ってコーヒーを飲めるコミュニティカフェを併設することにしたのです。お年寄りが多く、気軽にお話しできる場所が欲しいと思ったことがきっかけです。そこでまずは、コーヒーマシーンを置いてみました。今後は棚も徐々に減らしていき、65%ぐらいに圧縮して、余ったスペースをいよいよカフェにする予定です」

まずはコーヒーマシンを設置しました

森本さん「普段から私はお客さんたちと、顔の見えるお付き合いをしています。時間のあるときは、世間話で盛り上がることもありますね。中には、体調が優れず外出を控えているお年寄りに、私が車で商品をお届けすることもあるんです。商売でありながら地域貢献となる人とのつながりの場、そこを深めていきたいと考えています」

先代もお元気で、毎日午前中のスタッフとして働いて、アドバイスもしてくれるそうです。

お客様とのコミュニケーションを大事にする森本さん

森本さん「仕入れている商品が取引停止になり、困ったこともありました。そんな時新しい取引先の紹介を先代にしていただき、商品が欠品せずに済みました。本当に良きアドバイザーとしていつも助けてもらっています」

当面、頼もしい先代との二人三脚が続き、コミュニティカフェも整いつつある。これからも楽しみなお店になりそうです。

文:此松 武彦

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