「跡継ぎ×起業」の最大公約数で飲食店を応援。藤田酒店の2代目が見据える地域の未来

岡山県の中心部、岡山駅からほど近いところにある藤田酒店。軸となる酒販業のほか、飲食店に特化した求人サイトの運営、飲食店ホームページ作成、オリジナルのお酒ギフト「スナップリカーシーズ」、飲食店のデリバリー代行「Fujita Eats」など、多岐にわたる事業を展開しています。

そんな藤田酒店を運営するのは、2代目の藤田圭一郎さん。積極的に家業の事業を拡大しつつ、2020年には地方学生に長期インターン文化を根づかせる「COMPUS(コンパス)」を立ち上げました。

「跡継ぎ」と「起業家」としての自分のシナジーを最大にかけ合わせ、岡山の飲食業や学生、起業家たちを後押しする活動を次々と行っている藤田さん。その胸の内を取材しました。

起業するために決意した、家業の承継

大学生の頃から起業したいと考え、当時はまだ主流でなかったベンチャー企業での長期インターンなどに取り組んでいた藤田さん。しかし就職活動をきっかけに、周囲の考え方に飲み込まれてしまったと言います。

藤田さん「大学卒業後は電力関係の会社に就職しました。就職してからは起業のために何かをするというよりかは、スノーボードにハマっていました。スノボの資金を捻出するために働いてたようなものでしたが、怪我をしてスノボを続けるのが難しくなったことをきっかけに会社を辞めました。仕事にやりがいを感じていなかったんですね。

夢だった起業を考えましたが、資金もアイデアもない。せっかく家業があるなら、家業に入りながら起業のネタを探すほうがいいのでは?と考えるようになり、25歳で家業に入りました」

地域のブルーオーシャンを見つけて仕掛ける

入社後、まずは顧客のターゲットを居酒屋からバーやスナックなどのナイトタイム飲食店に移した藤田さん。それに合わせて藤田酒店も営業時間を変え、夜まで営業することにしました。

藤田さん「家業に入り、自分の酒店にも業界や街のしがらみがたくさんあることに驚きました。営業に行っても元々の人のつながりやしきたりには勝てない。販路開拓したいなと思い見つけたのがナイトタイムの飲食店でした。

また、継いだ当初はお酒を卸している飲食店との付き合いのなかで、御用聞き的な側面もあったんです。個人的にはそこでやりづらさを感じて、先代がやってこなかったことに目を付け、地域にもまだあるブルーオーシャンを見つけることにしました」

これまで未着手だった部分に対するアプローチが功を奏し、売上も10〜20倍にはね上がりました。ここには藤田さんの仕掛けたからくりがありました。

藤田さん「お酒を売り込むだけでは、どこも取引には応じてくれませんでした。営業に行くうちに求人が最も需要があると分かり、無料で求人情報が掲載できるナイトタイム向けの求人サイトを立ち上げました。お酒の営業は門前払いされていたのが、求人情報サイトの営業で行くとお店の対応がまるで変わったんですよ。一通り話した後に『酒屋です』って言うと買ってくれる。これで販路が広がりましたね」

今でこそインターネットで仕事探しをするのが主流ですが、約10年前は求人情報誌で募集をかけていた時代。岡山のナイトタイム飲食店の間で、無料で求人情報を出せる酒屋があると瞬く間に話題になっていきました。

起業の準備のために培ったITの力を活用することで、藤田酒店は既存の酒店の枠を超えた、新しい武器を手に入れることができたのです。

コロナ禍で打撃を受けた地域の飲食店に役立つサービスを

スナックやバーの求人サイトにとどまらず、藤田さんはコロナ禍にあっても様々なアイデアを形にしています。

ひとつは、ワインや焼酎をギフトとして贈る時に、思い出の写真やメッセージを取り込んだオリジナルラベルを付ける「スナップリカー」というサービス。コロナ禍の期間で大きく売上を伸ばし、心をこめた制作は藤田さんのお母さまのやりがいにもなっているのだとか。

そしてもうひとつは、岡山の飲食店の食事を代行して届ける『Fujita Eats』というサービスです。

藤田さん「飲食店がコロナ禍で打撃を受け、藤田酒店も売上が下がっていたときに、居酒屋さんから『土地勘あるし配達もできるからデリバリー代行して』って頼まれたんです。それでUber Eatsみたいにやろうかと『Fujita Eats』を立ち上げました。うちのスタッフが配達するので、サザエさんの三河屋のサブちゃんのような、顔がわかる安心感もあるようです」

元々のシステムを応用し2〜3週間でスピード開発。岡山の飲食店に非常に喜ばれ頼りにされるサービスとなっています。今後は県外にも横展開する予定です。

「アトツギ」×「長期インターン」の先駆者に

藤田さんは岡山からスタートアップ企業を生み出す活動にも、約4年前から中心メンバーとして参加しています。

藤田さん「これまで岡山にはあまりベンチャー企業の社長がおらず、コミュニティも可視化されていませんでした。だから岡山で『起業したい』という学生は、休学して東京行って長期インターンやって、成長して帰ってくる人もいました。

でも岡山でもそういう環境があったほうがいいと感じ、地方の学生のための長期インターンシップ求人サイトである『COMPUS』を立ち上げました。現在では学生の登録数が1,000人を超えています」

地方ではまだまだ浸透していない長期インターンですが、地方の企業にこそインターンを導入するメリットがあると、藤田さんは考えています。

藤田さん「長期インターンに取り組む学生の多くは、自分のキャリアに対して意欲的に考え、主体的に行動している傾向にあります。そのまま本採用になる学生もいますし、採用に繋がらなかったとしても、今繋がりを作っておくことが企業や社会人にとっても大きな資産になると思います。

地方に長期インターンが少ないのは、ベンチャー起業が少ないから。地方はアトツギにインターンを取り入れるのが鍵だと思っています。藤田酒店でも積極的にインターンを受け入れています。地元でやりたい人が少しでも都会との情報格差なくチャレンジができる土台を作っていきたいです」

酒店の基盤を元に、ITやWebの力を使っていく

藤田さんにとって、家業の酒店を継ぎながら、スモールスタートで起業できたことは本当に良かったと語ります。

藤田さん「家業があれば、自分で別会社を立ち上げる時に、家業の電話番号や住所が使えます。周りからの信頼や取引先との関係もあるので、家業をベースにして、起業にチャレンジするのはすごくいいと思います。あとは親子で仕事ができているのはすごくやりがいになります。家業を家族と一緒にやれていることが親孝行です」

やりがいがある反面、家族で一緒にやる仕事の難しさもあるようです。

藤田さん「1年のうち360日ぐらい働くのが当たり前でしたし、それくらいやらないと家業が回らないという側面もありました。僕は家業に加えて起業をしたかったので、家業で12時間程度働いたあと、6時間は自分の事業を立ち上げをやってましたね。

毎日18時間近く働くのは大変だったんですけど、これだけやっていれば物量的に僕よりも働いた人はいないんじゃないかと思って、ある種の自信が生まれました。あとは起業の準備のために、プログラミングやwebデザインを独学で学んでいたことが、家業に取り組む上でも自分で事業を作る上でも、すごく役に立ちました」

起業したいという目標がきっかけで家業を引き継いだ藤田さん。これからも家業をベースにしながら、岡山を舞台に新しい取り組みを進めていく未来に、期待が膨らみます。

株式会社COMPUS HP

文・望月大作

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