工務店から「幸夢店」へ。日本初の「全棟カラマツ宣言」で全棟道産木材の建築に挑戦

北海道の中心、観光地としても有名な「札幌市」。ここに株式会社三五工務店(さんごこうむてん)という創立64年の老舗企業があります。「いごこちのいい暮らしをつくる幸夢店」という企業テーマのもと、木のぬくもり溢れる素敵なお家をつくっている建築会社です。

この会社は2014年に北海道産木材を活用していくという「全棟カラマツ宣言」なるものを打ち出しました。この姿勢を表明したのは実は日本初。こうした新たな取り組みをどんどん推進しているのは、2020年に代表を引き継いだ田中裕基(たなかひろき)社長です。

目指したのは飲食×建築を掛け合わせたプロデュース

株式会社三五工務店代表 田中裕基さん

札幌生まれ札幌育ちの田中さんは、大学進学を期に上京しそのまま東京で就職。フードコンサルティング会社に勤めていました。

田中さん「東京の会社では主に、飲食店のお店づくりをトータルして行い、売り上げや利益に直結するようなコンサル業務を担当していました。飲食店に関わる仕事の醍醐味でもありますが、お客様の喜びを自分の目で見ることができるのが良いですね。それはつまり”自分の努力が自分に返ってくる”ということでもあり、やりがいを感じる日々を過ごしていました」

そんな順風満帆な日々の中、当時の三五工務店の代表であり、田中さんのお父様から「この会社の業務をやらないか?」と声がかかります。

もともと会社を継ごうとは思っていなかった田中さんでしたが、これまで東京で培った飲食業のノウハウを活かして、工務店での建築業と組み合わせることはできないだろうか?と、両方をプロデュースする新たな構想を思いつき、北海道へ戻ることを決意しました。

壁にぶつかった時、奥様の助言で気付いた大切なこと

しかし札幌へ戻り、三五工務店で働き始めてみたものの、必要となる2級建築士の取得が思うように進まなかった田中さん。「もう会社を辞めようか…」そんな考えさえ思い浮かんで弱気になっていた時、田中さんの姿を見かねた奥様から助言があったそうです。

田中さん「『自分のやりたいことばかりではなく、家族やまわりの人のことを考えてみて』と助言を受けました。その時、はっとしましたね。それで一度、頭を冷やしてみたんです。当時は自分がやりたいことをやるのがかっこいいって思っていました…。

でもこれからはまわりの幸せを考えていかなくてはいけない。そして、自分にしかできないことは何なのかを考えてみた時に、お客様や社員・家族のみんなに喜んでもらうということを自分の軸に決め、この会社に根を生やして頑張っていこうと決心できました」

奥様の助言をきっかけに覚悟を決めた田中さん。家族のため、社員のため、お客様のために自分ができることは何かと考えた時に思い浮かんだのが「建築用木材」だったと言います。

家業を通して全棟道産木材で家を建てることの価値を伝えたい

田中さん「北海道の食材は、農作物だったり、海産物だったり、その価値が認められていますよね。しかし、住宅を建てる際に使われる木に対し、北海道産にこだわるかどうかというところは、まだまだ追いついていません。

でも、北海道で生まれた木なんだから、この土地の環境が一番適しているはずだと考えました。そこで住宅も”地元のものを使う”というその価値を訴えていきたいと思ったんです」

飲食業にいた田中さんだからこその視点。ここから三五工務店は「全棟北海道産木材」への切り替えに着手し始めました。

まずは柱などの構造材や、無垢のフローリング材などを交渉し、直接仕入れをするところからのスタート。さらにはその木材と自社設計の掛け合わせを考え…ついに、洗練された北海道産の建物をつくることが実現しました。

しかし、ここまでカタチとして完成させるまでに「今後木材の価格が上がる可能性も…」「材料が硬くて扱いづらいのでは…」といった社内からの不安の声ももちろんあったそうです。そんな声に対し、田中社長はこう言いました。

田中さん「価格は上げないよう交渉を続けていく。材料が硬いならば、それに対応できる機械に替える。北海道産の木材の特性に合わせてこちらが変わっていく必要があると思いました」

林業の大切さを伝えることも会社の役割

さらに田中さんは、「木の伐採=自然破壊」だと思われてしまうことについて、人々に伝えていきたい部分があると言います。

田中さん「木というのは40~50年で伐採する時期を迎えます。木を伐採しないと成長しないからです。しかし、その伐採した木を住宅の材として使えば、その後木は100年生き続けることができる。改めて木や森のあり方を、伝えていくことが私たちの役割でもあると思っています」

こうして実現した、三五工務店の北海道産木材のぬくもりを感じることができるお家。木が好きな方、それを住宅に取り入れたいという方などからの問い合わせも増え、ここに需要があったということも分かったそうです。

田中さんの想いに共感した若手スタッフたちも

そこで、三五工務店が建てる家に興味を持ったお客様には実際にここで建てた家に住んでいる人の意見や、状況を見てもらいたいと『10年後のおうち見学会』というものも開催します。

田中さん「木による経年変化もありますが、それは逆に味わいにもなり、当初想定していたほどメンテナンスもいらないんですよ。マイホーム計画中の人たちにとって、新築の住宅を見学できるのはよくあることですが、実際に三五工務店が建てたお家に10年住んでみた方々の実際の現状を見学できるというのも、三五工務店の魅力のひとつだと思っています」

建築業だけにはとどまらない

建築業以外の分野でも田中さんは新しい挑戦を始めました。

別会社で株式会社35designという会社を立ち上げ、「35stock」「あめつち by 35stock」という名のカフェを自ら企画・設計・施工し運営をスタート。キーワードは三五工務店の名前にもある「35」。ちなみにこの数字は札幌市の北35条に事務所を構えたというのが由来なんだそう。

運営するカフェ「35stock」

田中さんが新たにつくったこのカフェも、もちろん三五工務店が手がけ、北海道産の木材で作られています。木のぬくもりを感じる店内で、道産食材を使った料理が味わえるという落ち着いた空間。建物、食事…このカフェ自体が、地元を大切にする食事と空間づくりを発信しているようです。

田中さん「これからも35という数字をひとつのシンボルとして、北海道の魅力を情報発信していきたいです」

会社の未来はもちろん、社員の事も考えて突き進む田中さん。会社を継ぎ、道産木材への切り替えるなど大幅な改革を見事にカタチにするというのは想像以上の苦労があったはず。ここに田中社長の実力と手腕を感じます。

文・くらしごと編集部

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