子どもの未来を創る老舗企業を元上場企業の役員が承継。DX化で推し進める改革とは

文豪の街・教育機関の密集地として知られる東京都文京区。歴史や文化の根付くこの街に、今年で創業65年を迎える老舗企業「ニューダイヤ産業株式会社」があります。

ニューダイヤ産業は創業当時から「技術・家庭科」の教材販売に力を入れており、現在でも首都圏・都内全域の中学校や高校に教材を展開しています。

「子どもを枠にはめてしまうと、世界に通用する人材は輩出されません」と語るのは、2020年3月に義父から事業承継して日々奮闘している、代表取締役の阿部洋介さん。

ニューダイヤ産業の未来を受け継いでいく阿部さんに、改革を続けていくことへの想いをうかがいました。

「事業承継」の経験があったため、後継者に名乗りを上げる

義父が病床に伏し、会社の売却も検討される中で継承を決断した阿部さん。上場企業の役員経験もあって、承継当初から資金調達やDX化を意識していたそうです。

ニューダイヤ産業株式会社 後継者の阿部さん

阿部さん「もともとニューダイヤ産業は義父が経営していた会社でした。義父が病気になったときにご長男様も長年ご病気をされており、後継者がいない状態で売却の話が浮上。過去にも自身で代表として2社、さらに役員として10社以上の事業承継の経験があったので、後継者に名乗りを上げました。

引き継ぎを決め、自分でデューデリジェンス* をしてから承継。4月以降はコロナ禍に入り、休校になる学校が増え不透明な中で資金調達を実施しました。経営者の不在期間が長かったので、会社に必要なものを取捨選択できていなかった印象です。とにかく無駄を省くところから取り組みました」

承継当初はすぐに資金調達をしつつ、キャッシュフローを可視化。DX化も含め、将来を見据えての戦略だといいます。

阿部さん「コロナ禍で、DX化が叫ばれていました。まずは日報などの紙媒体をペーパーレス化。営業マンにはスマホを渡し、位置情報サービスを導入しました。営業マンがどこにいるかがわかると同時に、その行動履歴をデータ化できる。営業マンの動きを可視化できれば、社員も市場におけるリアリティを体感できます」

*:企業の事業や経営の実態を調査すること

「事業承継」をしてから数々の改革を推し進めた

短い期間で、抜本的な改革をした阿部さん。次に実施したのは、現場への訪問でした。

阿部さん「7月ごろ、営業マンに同行して100校以上訪問しました。個々の営業マンが学校の先生と信頼関係を結ぶことが大切だと考え、とにかくコミュニケーションを重視しています。また、全体像を把握するために、コロナ禍ではあったのですが、その合間をみてサプライヤーにもうかがいました」

2021年1月になり、阿部さんは「数字は予算ありき」という考えのもと、社員に対して予算作成を徹底させました。昨年比の評価だけではなく、立てた数字にコミットするといった風土をつくろうと模索。新たに社内規定を定め、評価や勤退も多様性を尊重できるようなものにアップデートしていきました。

阿部さん「コーポレートガバナンスにも力を入れました。また、6月くらいに基幹システムを導入しはじめ、業務の生産性を高める努力もしています。古いまま放置されていたホームページも掲載内容を見直し、新たにリニューアルしました。DX化という観点では、かなりメスを入れたと思います」

事業承継してからの数々の改革は、わずか1年ほどで進めてきたもの。会社の社員や取引先との信頼関係、そして阿部さんが積み上げていた経験があるからこそニューダイヤ産業のサービスクオリティを維持できているのです。

「インキュベーション施設」で将来を担う子どもたちへの投資

事業承継してから抜本的に会社の体制を立て直し、革新を続けてきたニューダイヤ産業。2020年に代表取締役となった阿部さんもまた、時流に乗って革新を続けようとしています。

阿部さん「オフィスの不動産取得を行い、インキュベーション施設『Orange Lab』をつくりました。また、スポーツジムを経営する会社に出資し、健康産業にも経営参画しました。ジュニアやユースの子どもたちが早い段階で準備すれば、世界に通用できると考えています」

子どもたちの多様性を育むための場が必要だと感じた阿部さんは、インキュベーション施設をつくるなど挑戦を続けています。

「事業承継」はオーナーと買い手の相互理解が大切

後継者問題に悩んでいる事業者は増えており、これまで数多くの事業承継を経験してきた阿部さんも難しい課題だと説明しています。

 

阿部さん「事業承継は、オーナーと買い手の相互理解が大切でしょう。やはり事業承継は経験値がないと難しい印象です。承継後は、最初の半年間が勝負。その期間に社員の心を惹きつけられなかったら社員は離脱していきます。

これまで事業承継を20社ほど経験しましたが、まずはキャッシュフローを徹底的に把握しないといけない。そのためには自らすべての支払いを行いながら精査しないといけない。それと、何よりも社員の感情を肌感覚で把握。あらゆる手段を使って、積極的にコミュニケーションをとること。ミリ単位で気を使いながら、感情の起伏を意識すること。

また、銀行との関係性も重要です。新しい経営者は、どのような人なのか。どういった経験があるのか。金融機関としてのロジックを満たせるような対話が必要になってきます」

伝統を守りながら進化を続ける老舗「ニューダイヤ産業」

阿部さん「ニューダイヤ産業は、教育現場を支える事業です。昨今の教育環境は多様性にあふれ、加速度的に進むデジタルと少子化が大きなテーマ。

未来を支えている産業という意味では、社員もやりがいをもって働けていると思います。先生や業界の構造図をみると『私たちにできることは何か』と考えます。

多様性を育むには、やりたいことを自由にやらせる社会を実現するのが近道。若いときに進路を決めるのは難しいことですが、『少年時代にいかに情熱をもって生きたか』ということがその後の人生に大きく影響するので、やりたいことができれば掛け算式に人生を前向きに生きられます」

1955年から続くニューダイヤ産業は、伝統を守りながらも時代の変化に合わせて、革新し続けています。ニューダイヤ産業は今後どのような新事業を展開するのか、期待が高まります。

文・田中寛大

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