「真面目に頑張る人が報われる世の中を」。屋根材卸販売を行う老舗企業3代目社長の挑戦

創業64年、岡山県岡山市に拠点をおく白神商事株式会社。屋根工事店紹介ポータルサイト「やねいろは」や、災害からの早期生活再建のための香川大学との共同研究など、総合屋根材の卸売としてのネットワークやノウハウを生かし、さまざまな事業展開を行っています。

これらの取り組みの背景には、「真面目に頑張る人がしっかり評価される世の中にしたい」という3代目社長、白神康一郎さんの熱い思いがありました。

事業継承は「祖父から小さい頃に言われた使命」

昔から、創業者であるおじいさまに「後を継いでほしい」と言われていたこともあり、幼少期から後継になることを意識していたという白神さん。大学で陶器瓦のリサイクルコンクリート、大学院では再生PET繊維を入れたコンクリートの研究を行っていました。卒業後は、証券会社で金融商品の開発・営業・分析業務、そして企業買収などの業務を経て、税務・法務・会計を中心とした経営のいろはを学びました。

白神さん「証券会社でサラリーマンをしていた頃は、体力的にはもちろん精神的にもかなりハードな毎日を送っていました。同僚や先輩たちも非常に優秀な人が多く、そんな環境下でもしっかりと結果を出したいという思いから、たとえ無謀な依頼であったとしても何がなんでもやり切る、成果を残すために日々奔走していました。私のビジネスの基礎体力はここで培えたと思います。」

周りからもしっかり評価されてきたタイミングで、後を継ぐために退社を決意。

白神さん「証券会社での自分の将来も見えてきたタイミングでした。でも、後を継ぐことは自分に与えられた使命。やるからには、人生をかけてその使命をまっとうしなければと思ったんです。」

ずるいリフォーム店ばかりが得する世の中はおかしい

2016年2月にオープンした、屋根工事店とエンドユーザーをマッチングさせるポータルサイト「やねいろは」。その構想は、後を継いでからすぐのタイミングから浮かんでいました。

白神さん「色んな職人さんとお話していく中で、良い職人さんばかり損している構造に気がつきました。腕の良い職人さんは丹念に作業されるのでどうしても費用が高くなってしまいます。でも、ネット広告で打ち出されるのは安さばかり。腕のある職人さんの多くは、作業量も材料費も変えないまま、自分の給料を抑えて仕事を受けているんです。そんな状況を打開するためには、職人さんの腕やこだわりのわかるプラットフォームを作れば良いのではないかと思いました。」

しかし、このアイデアを形にするまでにはたくさんの困難がありました。

白神さん「そもそも、このアイデアは誰でも思いつきます。でも、誰もやっていない。それは、当時アフィリエイトやネット広告の強さや、屋根工事業界における『最安値』以外の価値創出の難しさにあったんです。地元岡山の企業や職人さんは賛同してくれたものの、他の他府県では相手にすらされませんでした。」

信念は曲げない、どこまでも愚直にコツコツと

どんなに厳しい状況であっても、白神さんの「良い職人さんが報われるように」という想いは揺らぎませんでした。「やねいろは」の掲載には基準があり、自社に屋根に関わる職人さんがいるのか、7年以上実務経験があるかなど厳しい条件をクリアしなければいけません。そのため、たとえ掲載依頼があったとしても、基準に満たしていなければ掲載できないのです。さらに、顔出し取材も必須要件となっており、掲載までのハードルは非常に高く設定されています。

白神さん「エンドユーザーの方が安心して頼めるように、そして職人さんの人柄を知ってもらえるように、ていねいに時間をかけて取材をしていきました。過大広告がないように、ファクトチェックもしっかり行っています。職人さんも、エンドユーザーの方もハッピーになれるサイト作りを徹底しました。」

そのため、組合で優勝するような企業・職人さんの掲載が増え、屋根工事に詳しい職人さんのなかでは「なんて優良なサイトなんだ!」と話題に。徐々に掲載数・依頼数は増え、2020年4月7日は新たに、外壁工事店とエンドユーザーをマッチングさせるポータルサイト「かべいろは」もオープンしました。また、災害からの早期生活再建のための香川大学との共同研究という新たな取り組みもスタートさせたのです。

白神さん「近年地震や大雨などの大型災害が立て続けに起こっていますが、十分な復旧対応ができておらず、屋根や外壁の修理に何ヶ月、何年も待たなければいけない状況が生まれてしまっています。さらに、被災者をターゲットにした詐欺なども横行しており、事態は深刻です。そこで、当社のネットワークとノウハウを生かして災害後の早期生活再建に向けた研究を今進めています。」

たとえ良いサービスでも収益化できなければ続けられない

どの事業にも一貫しているのが、「本当に良いサービスを、それらを必要としている人に提供する」という強い想い。インターネット広告に多額の費用を充てられる大企業が優位な状況下で、白神さんは真面目にコツコツと仕事している職人さんや、本当に良いものを求めるエンドユーザーをつなげるという、誰もがこれまで手を出さなかった事業に乗り出しました。しかし、いくら社会にとって良いものであっても、事業継続のためには結果、つまり収益化が欠かせません。

白神さん「今がまさに踏ん張り時ですが、一方でこれまで貫いてきた自分のスタイルが徐々に評価されはじめていることも実感しています。『白神さんに相談すれば質の良い職人を紹介してもらえる』ということで、現在大手企業さんとの事業提供の話も進んでいます。『良い職人さんが報われるように』という想いはそのままに、共感してくださる人を増やししっかりと収益も上げられるようにしていきたいですね。」

創業者の思いやしがらみもすべて受け継ぎ、向き合うことこそが「事業継承」

事業継承は「自分の骨を埋められるほどの覚悟が必要」とお話される白神さん。

白神さん「会社を継ぐということは、創業者の想いや、これまであった文化なども全て引き継ぐということ。未来のために改革も行わなければいけません。自分ひとりで起業する以上に背負うものも責任も大きいのです。周りは結果でしか評価してくれません。いくら社会にとって良いことでも、収益が上がらなければ社員さんにお給料が払えなくなってしまいますからね。

私にとって、今やっている仕事は『使命』だと思うんです。皆にとって良い社会を作っていきたい。真面目な人が評価される社会を作りたいと本気で思っています。これまでサラリーマンのレールに乗って生きていくような感覚がありました。それも悪くないですが、今は自分のレールに乗って自分の人生を生きている、と胸を張って言えますね。」

新型コロナウイルスというこれまでなかったようなパンデミック、そしてSDGsという概念が徐々に定着したことで、生き方や物選びにおいて「本当に良いもの」「作り手の気持ちの見えるもの」を意識的に選択するようになった人も多いのではないでしょうか。真面目な人たちが救われる社会を作るために取り組む白神さんの新たな取り組みと活躍に期待です。

文:佐原有紀

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