祖父の言葉から継いだ制服店。業界の縮小を見据えた、型に囚われない3代目の挑戦!

大阪第二の都市・堺。この街には、地域の人に長く親しまれている制服店である「制服のシラカワ(株式会社シラカワ)」があります。堺市の市立中学校の制服の考案を行う、堺市では誰もが知る制服屋さんです。

創業67年のシラカワを継承するのは、創業者の孫でもある片岡将太さんです。詰め襟からブレザーへ、ブレザーから制服自由化へ…….と、時代に合わせて変化する制服業界の中で、「制服」という枠にこだわらず、オリジナルTシャツ販売という新たな事業にも挑戦する片岡さんに、お話を伺いました。

引き継ぎのきっかけは、亡くなる直前の祖父の言葉

もともとは家業を継ぐつもりはなかったと話す片岡さん、心境の変化には祖父の言葉があったと言います。

片岡さん「祖父には11人孫がいて、男で自分が一番年下だったこともあり、家業を継ぐという意識はあんまりなかったですね。大学在学中には就職活動もしていました。

そんな中、認知症の祖父が亡くなる1日前に、はっきり『お前が継げよ』と言ったんです。幼い頃から祖父に聞かされていた『商売はええぞ』という言葉が印象に残っていたことや、新卒で入社した会社が合わなかったこともあって、これは縁だなと感じ、継ぐことになりました」

10代の頃から家業に親しんでいた片岡さんですが、事業を引き継ぎ、自分がお店に立つことで初めて見えたものがあると言います。

片岡さん「昔から手伝いをしていたので、事業そのものに戸惑いなどは感じませんでした。でも、自分に子供が生まれたこともあってか、今までは第三者として見ていたお客さんの喜ぶ顔がグッと近いものになったのは大きな変化でしたね。

真新しい、ぶかぶかの制服を着る子供への『お兄ちゃん/お姉ちゃんになったんやねえ』という共感が生まれたのかもしれません。そうやって地域に根ざして子供たちの成長する姿に携われるのは嬉しいです。

ただ、制服業界全体を見てみると、少子化の影響で制服を着る子供の数自体が減っているので、長い目で見て対策や別事業が必要だなとも感じました」

業界の縮小を見据えた、制服に囚われない新しい挑戦

家業の制服店と並行して、個人事業としてオリジナルTシャツブランド「LUMPWORKS」(ランプワークス)の運営にも取り組んでいる片岡さん。小ロットで1枚から制作できるとあって、初年度から月商が200万円を超えるなど、大きな成果が生まれています。

片岡さん「学生の頃からHIP HOPが好きで、ムラサキスポーツでアルバイトをしたりと、アパレルへの興味はありました。

「LUMPWORKS」では打ち合わせ時のヒアリングを最も重視して、デザインの知識があまりないお客さんのイメージをしっかり拾い上げることを意識しています。『なんかイメージと違うけどまあええかな』ではなく『そうそうこれこれ!』と思ってもらうのが目標ですね。

相談事が苦手で誰にも言わずに始めた事業ですが、売上が出せたことで、今では周囲からも応援してもらっています。今は僕個人の事業という扱いですが、目処が立ったら会社のもうひとつの軸にしていくつもりです」

片岡さんは、何のノウハウも知識も経験もないところから、手と足を動かして人脈を広げ、少しずつ「LUMPWORKS」の事業を拡大してきました。その経験を生かして、これから起業する学生や、新規事業としてTシャツ制作をしたい人向けのメディアもスタートしています。

片岡さん「小ロット専門だと客層は地元の人が中心です。『1枚からでも』という店が全国に広がれば、オリジナルTシャツを普段着みたいに楽しむ人が増えるのでは? という考えから、Tシャツ屋を育てるためのアプローチを始めました」

事業承継の魅力は、地域とのつながりごと継げるところ

家業の承継者であると同時に、「LUMPWORKS」の創業者でもある片岡さん。シラカワの歴史を継ぎながら新しいことに挑戦するプレッシャーはなかったのでしょうか?

片岡さん「もともと起業を考えてもいたし、何より楽しんで働く祖父を尊敬していたのでプレッシャーはありませんでした。そりゃあ労働時間も長いですが、少しでも祖父に追いつきたいので、めちゃくちゃ楽しんで抵抗なく働いています。

事業承継の魅力は、地域とのつながりごと事業を継げるところ。長年地域に根ざしている会社なので、飲みに行ったりすると『シラカワさんとこの!』や『うちもシラカワさんの制服着ててん!』と声をかけられることもしょっちゅうです。

そうやって歴史を引き継ぐことがが嫌な人もいるとは思いますが、僕の場合は良い緊張感になる。ありがたいですし、背筋が伸びる思いです」

時代に合わせて、会社の形も継ぎ方も変化させていく

社会に貢献するからこそ、地域に長く愛される会社になる。その貢献の仕方は時代によって移り変わっても、会社を残していくことには大きな価値があると、片岡さんは語ります。

片岡さん「少子化や縫い子さんの減少、制服自由化なんかで、業界は目まぐるしく変化している。会社が歩んできた今までの67年とこれからの50年は全く違うものになるだろうと思うんです。

せっかく祖父が「制服のシラカワ」ではなく「株式会社シラカワ」として会社を残してくれたので、時代の流れに合わせて新しいことにもどんどん挑戦したいと考えています。

制服がいらない世の中になったらTシャツをメインにすれば良いし、そういう意味では後継者も必ずしも血縁者でなくても良いのかなと思います。

そりゃできれば自分の血の繋がった子に、とも思いますが、イヤイヤ継がれるくらいならやる気のある若い人に継いでもらった方が、その背中を見る次の世代に繋がっていくのではないでしょうか」

あくまで「会社を残してゆくこと」を重視しながらも、柔軟な姿勢で新規事業にも精力的に取り組む片岡さん。制服でも、Tシャツでも、本質的にやっていることは変わらないのかもしれない。

聞き手:川合裕之

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