二足のわらじでお店を事業承継。DXを導入し新たな経営に挑戦します!

広島県広島市にある「有限会社脇屋」が営む「ワキヤコーヒー」は今年で創業32年目。輸入業者から海外の生豆を仕入れ、お店で焙煎した豆をお客様に販売しています。コーヒー好きの先代がこれまで堅実な経営を続けてきた会社で、地域の人やコーヒー好きの常連客に愛されています。

しかし先代の木村悦男さんの体調が崩れたことをきっかけに、娘の夫にあたる岡村慎太郎さんが有限会社脇屋を引き継ぎ、2021年3月1日に代表取締役に就任しました。

これまでIT業界で働いてきた岡村さんは、事業承継後も二足のわらじで会社を経営しています。事業承継して1ヶ月に突入した岡村さんにお話を伺いました。

長年大切にしてきたお店を、何かしらの形で娘に残したい

有限会社脇屋は岡村さんの奥様のご両親が経営していました。広島の中心部と少し外れた五日市市に2店舗お店を構えていたものの、2年前に義父が体調を崩し満足に働けなくなったため、広島中心部の店舗は畳み、五日市店のお店を義母が経営に関わる形で切り盛りすることに。しかし、立て続けに義母も大病を患ってしまい、事業を継続することが難しくなってしまいます。

当初は第三者承継か廃業を検討しており、広島県の事業引継ぎ支援センターに相談もしていました。何件か応募もあったものの、「長年大切にしてきたお店を何かしらの形で娘に残したい」というご両親の想いもあり、岡村さんが「会社を譲るので事業を承継してくれないか?」と打診されたと言います。

長年培ってきた経営資源を生かしながら、新しいことも取り入れていく

岡村さんは兵庫県出身。仕事の関係で広島にいたときに奥様と出会い結婚し、転職を機に東京へ引っ越して充実した日々を送っていました。

岡村さん「承継の話をいただいたのは昨年の11月中旬くらい。広島にお見舞いも兼ねて話を聞きに行きました。お店の状況をヒアリングしているうちに、義父が半生を捧げて大切にしてきたお店を失うのは惜しいと思い、その場で承継することを決めました。自分のやりたいこととマッチしていることも理由として大きかったです。11月末に会社に相談したあと1ヶ月くらいで話をまとめて、1月には広島に引っ越してきました」

元々情報システムの責任者やCIO(最高情報責任者)を目指してた岡村さん。ITを軸にした経営に将来性を感じており、自分のスキルを生かせる仕事がしたいと考えていたと言います。

岡村さん「時代が変わっていく中で、変化の波についていけず潰れていく会社はたくさんあります。ワキヤコーヒーもいい豆の仕入れルート、固定のお客さんと、長年続けている地盤はありました。しかし、キャッシュレス決済をはじめたとした、世の中の変化の波に乗り切れていませんでした。ワキヤコーヒーが持っている経営資源を生かして、事業を発展させるためには、ITを駆使すれば伸びる可能性は十分あるなと思っていて。であれば自分がこれまで培ってきたスキルが活かせるなと

また、岡村さん自身もコーヒーが好きで学生の頃から豆を挽いてコーヒーを飲まれていたそうです。

複業しながらお店を経営することに

事業承継後も、お店の定休日や開店前・閉店後に以前から勤めている会社の仕事は続けています。

岡村さん「事業承継の相談を会社にした当初は、退職するか正社員から業務委託に変えてもらおうと考えていました。しかし会社と色々話し合った結果、今までになかった雇用形態を作ってもらい契約社員として働けることになって、応援してくれる会社には感謝でいっぱいです」

有限会社脇屋の業務では店舗に出て珈琲の焙煎や接客をしたり、経理まわりなどの経営者としての仕事全般をこなしつつ、バックオフィスのDXにも取り組んでいます。

以前から多岐にわたって活動されていたため、複業での働き方も楽しみながらお仕事をされているようです。

アナログで非効率的なところを整理していくところから

お店の経営自体は特に大きな問題はなかったものの、アナログな部分が多くネット販売とバックオフィス体制には大きく改善の余地がありました。

岡村さん「ネット販売は売上は低かったものの、コロナの影響もあり勝手に微増していました。実店舗の売上は昔より下がっているものの多少の黒字でした。しかし給与の支払いやキャッシュレス決済の手続きなど、バックオフィスが複雑な業務フローになっていました。それらに代表取締役と取締役がかなりの工数を割いていた状況で、まずはこの部分の整理から始めています

事業承継後は顧客の管理と売り上げの管理をクラウド系のサービスに移行する手配を進め、今ではだいぶ整理されてきました。人の手を介さずにできるところを整理し、空いた時間をお店や経営に充てることができるようになりました。将来的に一部は外注を入れることも検討しているそうです。

最適解を目指して取り組めるのが楽しい

岡村さん「社内システムに関わる仕事をずっとやってきていますが、一番最初の会社を立ち上げるところがいちばん楽しいんですよ。小規模な状況じゃないとできないことってやっぱりあって。IT化できる余地がたくさんあるので、自分の経験を生かして最適解を目指してやっていける楽しさはありますね」

長年続けてこられたお店の地盤はもちろんあるので、お店の色とバランスを取りながら組み入れていきたいと語ります。

岡村さん「大きい会社だと、予算を使うのに稟議とか厳しいじゃないですか。経営する立場になると、自分が間違いなく正解だと思うことを自分の裁量だけでやれるのは楽しいですね。」

効率化やIT化を取り入れても「手触り感のある接客」は大切にしたい

先代はお店のIT化や商品の値上げなど、これまで踏ん切りがつかずやってこれてませんでした。従来のやり方を時代の波に乗れず変えてこれなかったという心残りがあり、事業承継したあとは岡村さんの新しい発想で自由にやって欲しいとバトンを託しました。

岡村さん「うちのお店は地域に住む方や、近くに大学があるので学生の方もよく豆を買いに来られます。直接お店へ足を運んでくれたり、電話やFAXで注文してくれたり。お客さんがいてくれることでお店は支えられているなと、お店に出ると実感しますね。「いつもの」と言われてすぐに商品が出せるような《手触り感のある接客》は効率化やIT化を取り入れていく中でも大切にしていきたいですね」

多くの人にコーヒー豆を届けれるように

今後はお店のサイトのリニューアルをして、「売り上げを10倍にすること」が目標だと岡村さんは語ります。今のサイトは、元々お店のお客様が電話でも注文できるようにと作られました。そのため、ネット通販ではありますが広島のお客さんが多いそう。

岡村さん「コーヒーの市場は年々業績が伸びています。去年からコロナの影響で店舗の販売は以前よりも減りましたが、ネットでの売り上げは右肩上がりです。今のサイトは改善の余地がまだまだあるので、リニューアルを行い販売先を全国規模に広げ、来季くらいまでには売り上げを10倍くらいに伸ばしたいです」

また、岡村さんは珈琲鑑定士を目指して日々勉強中とのこと。

岡村さん「全国に商品やお店を知っていただくためには、私自身コーヒー界隈でそれなりに認知を上げる必要があると思っています。例えば、バリスタの世界チャンピオンやコーヒーの世界だとコーヒー鑑定士など。元々珈琲は好きでしたが、ビジネスとしてやっていくにはまだまだ知識不足。私が知識不足でも、長年勤めてくださっている焙煎士の方が豆の選定や焙煎を行うので、品質はこれからも変わりませんが、やっぱり自分でも知識をつけたいと思います」

最近では岡村さんが挽いた豆も少しずつお店で販売しています。自分が焙煎した豆が、お客様の手に渡るのを見ると嬉しいとのこと。

PCの前だけで仕事すると画面の先の反応は見えづらいですが、お店を経営しているとエンドユーザーの反応が直接見れるためまた違った喜びがあるそうです。

32年間地域のお客様に愛されてきたお店のバトンを受け取り、これから岡村さんの手で新たな色が加わります。時代のうねりに合わせて変化していく、これからのワキヤコーヒーがどんなお店になっていくのか楽しみです。

文:手嶋芽衣

 

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