日本三大商人のひとつ「近江商人」の文化が根強く残る、滋賀県日野町。人口は約2万人で、町内には商工業・農業などの魅力ある事業所が多くあります。また、お米やお茶など農業も盛んで、自然資源と多くの歴史文化に恵まれた町です。
令和4年度からrelayと連携を開始した日野町では、「relay the local 日野町」の運営を始め、事業者の状況調査、説明会の開催など積極的な対策を進め、見事マッチングも成立しています。
令和2年7月に就任された堀江 和博町長は、日野町の出身。地元であるまちの現状を、どう見つめ、事業承継についてどのように考えているのでしょうか。まちの課題や未来の展望について、お話を伺いました。
話し手:日野町長 堀江和博様
聞き手:relay編集部
日野町の一番の魅力は「人」
──(聞き手)relay編集部(以下、略):本日はよろしくお願いします。日野町は豊かな自然や伝統的な街並みも多く残っていますが、町長が感じる町の魅力はどんなところでしょうか。
堀江町長(以下、略):一番の魅力は「人」です。困ったことがあったら町の人同士で助け合う、自治力を強く感じるところですね。町全体をきれいにするとか、お祭りしっかりやるとか、文化風習も残っています。日野は近江商人の町なので、屋敷や街並みも現存していますし、伝統や文化が息づいている町です。
食べ物でいいますと、近江牛ですね。日野では「近江日野牛」というブランドが有名です。とても美味しくて、地元で食べればコスパもいいです。
また、日野町は滋賀県の中でも関東文化が根付いている地域なんです。5月に行われる日野祭の曳山や祭囃子も関東文化が今に伝わっています。江戸時代は、日野に本宅を残した商人が漆碗や薬等を運び、埼玉、栃木、群馬で商いを行っていました。今でいう二拠点生活を江戸時代からしていたということですね。
──そういった歴史は、日野町の地域活性化にも繋がっているのでしょうか。
はい、こういった歴史は日野町にとって強いコンテンツです。長寿経営をめざす企業コンテンツに繋ぐために、近江商人の中でも日野商人の研究を進めています。
85%が小規模事業者の地域でできること
──relayとの提携について、反響はいかがでしたか。
町でもこの取り組みについて反響があり、事業承継に関しての問題意識を持ってもらうきっかけになりました。商工会とも連携していますので、事業者の皆様も心強いと思います。
日野町は小規模事業者が多い町で、全体の85%が小規模事業者です。担い手問題で悩まれていらっしゃる方も多いのですが、狭い範囲の中でのマッチングは難しい状況。relayは事業承継自体をオープンにすることで、対象者が日本全国に広がっています。これは今の時代に即していると思います。
──relayにはどんなことを期待されていますか。
日野町だけでなく、日本全国で多くの小規模経営の方が事業承継に悩まれていると思います。relayは自己実現や地方への移住も含めて、日本全国の地域に貢献したい、自己実現したいという若い方々に遡及できるツールだと思います。今後は日野町でも地域おこし協力隊募集とのコラボもやっていきたいですね。移住をして来られる方も迎える側も、それぞれがハッピーになることができると期待しております。
「三方よし」な地域経済を応援したい
──今後、町がどのように発展していくことを期待されているのでしょうか。
テーマは「持続可能性」ですね。頑張って人口を増やしていくのではなく、もし仮に人口が減ったとしても持続可能な運営ができるということが重要になってくると思います。規模や人口だけでは図れない、幸福度や地域経済の循環を大事にしていける町にしていきたいと考え、そのための取り組みを進めています。
──町として、ぜひ残していきたい産業や文化などはございますか。
日野町には小規模事業の良さがあります。駅前や町中には商店街があり、どの店舗の方もビジネスのためだけでなく、地域のコミュニティーに貢献していただいています。そういったものが続いていくようにしていきたいですね。
日野町は近江商人の町で、近江商人の経営哲学「三方よし」が広く知られています。これは、商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえるという考え方です。近江商人の中でも、日野出身の日野商人は、出店数においては群を抜いていました。
日野町では、社会貢献的な商売を築いていけるようにしたいと思っています。そういう意味で事業承継って非常に大事なんです。単に経済的な合理化でなく、地域貢献、社会貢献的な要素があるので我々はそれを推奨し、応援していきたいと思っています。
──事業を引き継ぎたい方に対してのメッセージはございますか。
日野町には近江商人の「三方よし」の気質が残っています。町も協力させていただきますので、事業承継を通して一緒に町づくりをしていく仲間になっていただけると嬉しいです。
事業承継を後押しする行政サポート
──後継者不足に悩んでいる事業者の方々にメッセージはございますか。
これまで長い期間にわたり、商売を続けてきてくださったことに感謝しています。もしかしたら、今まで頑張っていただいた事業を引き継ぎたいと思ってくださる方がいるかもしれません。事業者の方が思っていらっしゃる以上に次世代へ繋いでいただくことは町としても価値があります。
後継者がいないということで事業を辞めるのは、もったいないです。今まで歩んできたことが次世代に繋がれば、頑張っていただいた証も残ります。
──町として支援できることはございますか。
譲渡される側には、商工会と連携して情報収集や制度の説明の場を設けています。後継者の方々へは、移住定住促進という観点からは空き家の情報提供、住宅リフォーム制度、創業支援事業補助金、子育て支援等があります。ご相談いただければ、住んでいただきやすいように、いろいろ応援させていただきます。
移住されて農業をスタートされた方、商売を始められた方も多くいらっしゃいます。移住者同士の繋がりもあり、行政も関わっておりますので、悩みや思いも共有できると思います。
──最後に、全国のみなさんにアピールできることがあればお願いします。
おだやかな田園風景が残り、近江商人の哲学が息づき、江戸時代的なものや古き良き昭和感がある町です。近江商人の「三方よし」の気質が残る日野町でチャレンジしてみませんか。
──本日は、ありがとうございました!