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【首長インタビュー】ものづくりの文化が根付いたまちで、共感し合う事業承継を

市内には渡良瀬川と桐生川が流れ、山々が連なり、水と緑に恵まれた自然豊かなまち、桐生市。
古くから織物のまちとして栄え、のこぎり屋根の織物工場や伝統的建造物が数多く残るまちなかには、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている地区もあります。

現在でも織物関係の小規模事業者が多く存在する桐生市において、経営者の高齢化による廃業の課題が大きくなってきたことから、2023年度より「relay the local 桐生市」を開設しrelayと連携を開始しました。

令和元年5月に就任された荒木市長は桐生市の出身。地元であるこのまちの現状を、どう見つめているのでしょうか。まちの課題や未来の展望について、お話を伺いました。

話し手:桐生市長 荒木恵司様
聞き手:relay編集部

織物・のこぎり屋根工場・桐生八木節まつりなど魅力が詰まった桐生市

桐生市 荒木恵司市長

──桐生市の魅力を教えていただけますか。

荒木市長:桐生市は昔から織物が盛んなまちです。歴史は古く、1,300年ほど前の歴史書「続日本紀(しょくにほんぎ)」に桐生の絹布(けんぷ)が献上されていたことが記され、古くから「西の西陣・東の桐生」と呼ばれていました。今でも桐生市には、製糸・撚糸・染織・縫製・刺繍などの繊維に関する様々な技術を持つ事業所が集積しており、繊維の総合産地となっています。

織物のまちを象徴するのが「のこぎり屋根工場」です。のこぎりの刃のようにギザギザとした屋根を持つ工場のことで、昔から繊維産業の工場として使われ、今でも市内に200近くの建物が残っています。現役の工場として稼働しているものもあれば、現在はレストランやパン屋、和菓子屋などの店舗として活用されている例もあります。

さらに、市内の真ん中に渡良瀬川と桐生川の2つの清流が流れ、三方を山に囲まれた山紫水明の場所です。市街地から車で10分行けば田園風景が広がり、生活エリアと里山エリアが混在する暮らしやすいまちになっています。

のこぎり屋根

──魅力が盛りだくさんのまちですね。

まだまだありますよ。毎年夏に開催される「桐生八木節まつり」は3日間で約50万人の観光客が集まり、賑わいを見せます。一番盛り上がるのは八木節おどりで、6か所に設置されるやぐらを参加者が囲んで踊ります。また、伝統のある鉾(ほこ)の巡行も見どころで、本町3丁目と4丁目を舞台に繰り広げられる「鉾の曳(ひ)き違い」はまさに圧巻です。

さらに、毎月第1土曜日に開催される買場紗綾市(かいばさやいち)や骨董市も大変人気のイベントで、毎月多くの人で賑わいます。食品や手工芸品、骨董品などが販売されます。

桐生市長が目指すまちづくりとは

──桐生市は内閣府が選定する「SDGs未来都市」にも選定されていますね。

スローモビリティ(低速の電気自動車を利用した公共交通サービス)とスローライフを提唱した「ゆっくリズムのまち桐生」を宣言しています。現代は何かとスピード感や利便性が求められますが、あえてゆったりとした時間を意識したスローライフや、スローモビリティを活用した環境にやさしいライフスタイルを推進中です。

例えば低速電動コミュニティバス「MAYU(まゆ)」は、最高時速19kmで桐生の観光地をめぐります。環境にやさしいだけでなく、会話をしながら景色を楽しんでいただけます。

──どんな文化を桐生市に残したいとお考えですか。

桐生市の呼称に、「織都(しょくと)」と「球都(きゅうと)」があります。桐生市は織物と並んで、野球も盛んなまちです。WBCの栗山監督に講演をしていただいたり、野球を通した地域活性化を目的にした「球都桐生プロジェクト」のスペシャルアドバイザーに斎藤佑樹さんに就任いただいたりと、力を入れています。

野球だけではなく、全てのスポーツを通してスポーツマンシップの精神を子どもたちに養ってもらいたいです。スポーツの語源は「楽しむ」から来ています。スポーツを楽しみながら、自らを高めたり、相手を讃えたり、やり抜く覚悟を身につけたりと学んでいってほしいですね。

relayの事業承継で、地域経済の活性化や雇用の安定、移住促進を目指す

新川公園

──relayと提携する以前、事業承継にどんな課題をお持ちでしたか。

桐生市にはものづくり関係の小規模事業者が多く存在します。経営者が高齢で、後継者がいないため、やむなく廃業する事業者が増えてきました。2009年には約7,000近く存在していた事業者は、2021年には約5,400まで減っているのです。

relayで事業承継をオープンにすることで、地域経済の活性化や雇用の安定につながると期待しています。relayとの提携は、桐生市の産業構造の変革におけるとても重要な位置付けです。

──どのような点でrelayのサービスに魅力を感じたのでしょうか。

2点あります。1つ目は事業者の情報が開示されているオープンネーム型の事業承継プラットフォームだからです。事業者のストーリーや思いなどをオープンにすることで、後継者と思いを共有できるのは売り手と買い手のどちらにとってもメリットだと思います。

2つ目はオンラインで全国に向けて発信でき、後継者が桐生市に移住してくださる点です。桐生市では独自で移住支援を行っており、移住の相談窓口「むすびすむ桐生」を設けました。「むすびすむ桐生」は桐生市でお店を開きたい方や起業したい方をターゲットにしており、移住者に補助金をはじめとする手厚いサポートを用意しています。relayの事業承継と相乗効果で、移住者を増やしていけたらと考えています。

──事業承継を通して、どんな未来を実現したいですか。

繰り返しになってしまいますが、桐生市は繊維の総合産地として、ものづくりの文化が深く根付いており、どこにも真似できないような付加価値のある品物を生み出してきました。これからもキラリと光るビジネスチャンスを桐生市で生み出していきたいと思います。

仕事への思いに共感し合う事業承継の実現に期待

重要伝統的建造物群保存地区

──事業承継で、首長として後押しできることを教えていただけますか。

桐生市の移住支援を通して事業承継や移住をサポートしていけたらと思います。

今まで商工会議所や地元の金融機関などと提携して事業承継を促進してきました。しかし事業承継はどうしても硬いイメージや、とっつきづらいイメージを拭えないままでした。relayでは思いやストーリーを伝えられるので、事業承継により親しみやすさを感じていただけるのではないかと考えています。

新しい事業者の方には、相談窓口「むすびすむ桐生」や「きりゅう暮らし応援事業(住宅取得応援助成)補助金」なども活用していただきたいです。

──relayの事業承継サービスの利用を検討されている方に向けてメッセージをお願いできますか。

事業主の方は仕事に対する思いとともに続けてこられたのだと想像します。relayで思いや職人の技、プライドなどをオープンにすることで、共感してくれる後継者とのマッチングが期待できます。売り手も買い手もお互いをさらけ出して、思いを共有し合えば、双方にとってプラスの効果があるはずです。

──今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(relay編集部)

(※)参考リンク
むすびすむ桐生
きりゅう暮らし応援事業

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