宮崎県延岡市で札幌ラーメンを提供している「麺やふじ福」。2017年6月に第1号店である市役所横店がオープンし、2022年6月に山月町に2店舗目となる本店がオープンしました。現在、市役所横店の店長を勤めるのは藤本和也さんは、2022年11月に先代の後藤福一さんからお店を引き継ぎました。
先代との出会いは地元の居酒屋 もともと店の常連だった
藤本さんは、もともと先代と知り合いだったと話します。事業承継に至った経緯について次のように語ってくれました。
藤本さん「20年以上前、当時はまだ結婚前だった今の妻と一緒に、とある居酒屋によく通っていました。そこで、同じくお客さんとして来ていた先代と知り合いました。妻の知り合いが経営している居酒屋だったのですが、先代やほかの常連さんたちと、友人としてお付き合いするようになったんです。
そうしたご縁もあり、先代がお店をオープンするときに妻がアルバイトとして働くことになり、私は週に1回くらいラーメンを食べに行っていました。開店から6年が経ち、新店舗を出店するにあたり、私に話がまわってきました」
40代前半で会社員を辞めて事業承継
事業承継の話をもらったときの藤本さんは、仕事でもプライベートでも大変な状況だったそう。
藤本さん「もともと私は高卒で就職をして会社員をやっていましたが、次第に仕事が忙しくなり、妻も大きな病気をして、2年間入院するなど慌ただしい日々を送っていました。
その折に、2020年、先代から事業承継の話がありました。最初は冗談だと思っていましたが、繰り返し声をかけられて、事業承継を検討するように。当時、40代前半だったので、今が最後のチャンスかなと思いました」
コロナ禍でも引き継ぎを決意したのは「単純にラーメンが美味しかったから」と笑顔をこぼす藤本さん。
当初は、会社勤めと並行してラーメン店の業務を覚えていきました。
藤本さん「事業を引き継ぐ前に、2年近く見習いをしました。本業が休みの土日に働いてお店の雰囲気を覚えました。見習いの間は自分のまかないのラーメンだけ作っていましたね。
先代はとにかく何事も楽しむ人。その姿を見て、引き継いでみてもいいかなと思ったんです。仕事を楽しんでできる人は、なかなかいないような気がします。その後、2022年3月に正式に会社を辞めて、お店を引き継ぎました。大変ですが、今はただ楽しいです」
今も毎日のように本店に足を運ぶ藤本さん。麺を本店から仕入れているため、先代と顔を合わせてコミュニケーションも取っているそうです。
藤本さん「先代はなんでも聞いてくれるので心強いです。『こんな出来事があったよ』とか、人の流れについてや、イベン卜情報の共有などをしています。このお店は、師匠である後藤さんの功績で成り立っています。その初心を忘れず今後もやっていきたいです」
事業は休みなしでも、自分にとってのメリットが明確
事業承継をして大変なことは、労働時間が長いことだと話します。
藤本さん「朝8時30分から仕込みをして、終わりは21時30分です。お店の数字のことは、帰宅してからやるので、本当に体力が必要です。でも、会社員だったときとは仕事の種類が異なるので、疲れ方がちょっと違うんですよ。
以前はデスクワークだったので、頭を使っていましたが、今は身体が疲れます。でも、疲れが溜まっている感覚はあまりないですね。精神的に楽だからだと思います」
事業承継する前と、した後のギャップについては次のように語ってくれました。
藤本さん「休みは全然ありませんが、苦ではありません。この仕事が自分を変えてくれたと思っています。会社勤めだと、『これをやっても意味があるのかな』と疑問に思うときがありました。
でも今は自営業なので、自分のためにやっています。それが家族のためにもなりますし、メリットがハッキリしています。多分、それがやりがいなんでしょう」
「味噌ラーメンといえばふじ福」を目指して
長年勤めた会社を辞めて事業承継をした藤本さんですが、新しいチャレンジにも積極的です。
藤本さん「これからはイベントにもたくさん参加したいと思っています。多くの人にお店のことを知ってもらいたいです。ラーメンの味は先代の時から、あえて変えていません。元々私もここの常連で、先代のラーメンが好きだったので、その味を変えないようにしています。変えるのは怖いですね。
これからは、地域の人に『味噌ラーメンは麺やふじ福だな』と言われるようなお店を目指します。毎日ちょっとずつ積み上げていくことで、ビジョンは見えてくるかなと思います」
セカンドキャリアとしての事業承継
最後に、事業承継を視野に入れている人たちに対して次のように話してくれました。
藤本さん「事業を引き継ぐと、常連のお客さんもついて来てくれる。だから、集客の面での苦労は少ないですね。会社員の時と比べたら、楽しいことしかありません。やればやるほど改善できるし、成果が出ます。会社員のときは、やっても手ごたえがないと感じることも少なくありませんでした。
ただ、前職で経理をしていた経験は生きていると思っています。セカンドキャリアと言いますか、そこがいいところなのかなと。事業を引き継ぐことができるのは、やはりそれまでの経験があってこそだと思います」
まだ事業を引き継いで数カ月ですが、日々を積み重ねることでお店をより良くしていきたいと藤本さんは語ってくれました。メニュー表なども、前職の経歴を活かして、藤本さんが作成しているんだそう。進化を続ける「麺やふじ福市役所横店」の今後が楽しみです。