成約案件インタビュー

【成約事例インタビュー】アウトドアが好きだからこそ。森に近いこの旅館を残したい。

長野県松本市奈川にある「山荘わたり」は、スキーや温泉を楽しめる松本市所有の施設で、上高地や木曽、乗鞍へのアクセスの良さが魅力の旅館です。

2009年から旅館業を営んできたのは、東京から奈川地区にIターン移住した亘亘(わたりわたる)さん。地域の賑わいを守りたいという想いから、事業承継を決断し、2024年6月に宋之光(ソウ シコウ)さんが、パートナーの劉安琪(リュウ アンキ)さんと共に旅館を引き継ぎました。

奈川への移住や未経験の旅館業に携わるのは、初めての宋さん。引き継ぐことや移住に不安がなかったのでしょうか。事業承継の経緯やきっかけ、承継後の様子を伺いました。

承継者: 宋之光さん(ソウ シコウ) 様
聞き手:relay編集部

事業承継を考えたきっかけは「アウトドアが好き」という想いから

ーー(聞き手)relay編集部(以下、略):事業承継を考え始めたきっかけを教えてください。

(承継者)宋之光様(以下、敬称略):きっかけはアウトドアが好きで、自然豊かなエリアでの生活に憧れていたことです。2013年に訪日して、大学院に通っていたときから、趣味でキャンプやダイビング、登山など海や山を楽しんでいました。

事業継承を考え始めたのは、横浜で会社員として働いていたときのことです。

将来について考える中で「アウトドアを仕事にしてみてはどうか」と彼女と話し合うようになり、リスクの少ない形で事業をできる方法を探し始めたのがきっかけです。

ーー「山荘わたり」の募集はrelayの記事を読んで見つけたのでしょうか?

宋:探すときのキーワードは、温泉や旅館、キャンプ場などでした。よく遊びに行った静岡や千葉、長野などのエリアを中心に探しているうちに、relayさんの記事を見つけたんです。
記事には、亘さんの想いや活動が紹介されており興味を持ちました。私も彼女もスキーや温泉が大好きで、両方を兼ね備える「山荘わたり」は、私たちにぴったりだと感じたのです。昭和的な旅館の雰囲気にも惹かれ、まずは相談してみようという話になりました。

心温まる人柄と亘さん夫婦の理想的な暮らしが決め手

ーー承継先として「山荘わたり」を選ばれた理由や事業承継を決めたポイントを教えてください。

宋:始めは、relayさんと事業譲渡のサポートをしてくれた長野県M&Aセンターの菅沼さんとのオンラインミーティングから始まったと記憶しています。とても丁寧な対応をしてくださったのでたくさん質問ができました。

実際に「山荘わたり」に彼女と宿泊体験にきた際にも、暖かく迎え入れてくれたのがうれしかったです。菅沼さんも亘さんもすごく安心感を感じさせてくれたのですよね。

亘さん自身も奈川へ移住されて、初めての場所で仕事や関係を作ってきている大先輩です。その人柄や、ご夫婦の温かい雰囲気に惹かれたことも、選んだ理由の一つですね。

ーー旅館業は未経験とのことですが、事業承継に不安はありませんでしたか?

宋:2人だけで始めていたら、何もかも分からず不安だったと思います。私にとって旅館業は初めての挑戦でしたが、何より亘さんのサポートを受けながらスタートできることがとても心強かったです。

奈川での生活は毎日が新鮮で、できることから進めています。冬の奈川での生活自体が初めてなので、雪かきや冬の生活方法など、これからも学ぶことがたくさんありますが、相談できる相手が身近にいるのでさほど不安は感じていません。
今は、自分たちの理想の旅館を作っていく過程が何より面白いですね。

地域の魅力に触れる!奈川での旅館業の新たなスタート

 

ーー実際に旅館業を引き継ぎ、奈川で過ごしてきていかがですか?

宋:引き継いで夏から秋にかけて過ごしましたが、思った以上に海外の方や若者の方が訪れていて、とても賑わっていると感じました。

旅館業自体は、亘さんにも仕事をしていただきながら行っています。元々週末のみの営業をされていたので、週末は亘さんにお任せして、私は平日運営を担当している形です。もちろん、週末の営業では、料理などを学びながら一緒に行なわせてもらっています。

現在は簡単な料理しかできませんが、今後は亘さんのように地元食材を使った料理を提供できる宿を目指しています。地元の食材を使った料理を亘さんに教えてもらっているところですね。

ーー大きな旅館ですが、スキー以外にも需要はあるのでしょうか?

宋:奈川には、グラウンドや体育館、テニスコートなどがあり、高地トレーニングができる環境が整っています。「山荘わたり」も50〜60人は収容が可能で、今までも受け入れていたので、今後も続けていく予定です。

団体ツアーなども受け入れられるポテンシャルがある宿なので、海外へのアピールも考えています。

初めての旅館業にやりがいを感じる

ーー事業承継後に感じた課題や、承継前とのギャップなどはありますか?

宋:初めは、とにかく学ぶことがたくさんありました。宿の営業に何が必要で何をしなければならないのか、本当に基本的なことから教えてもらっています。一番大変そうなのは、食材の仕入れですね。買い出しには松本までいくので、丸1日かかると考えています。

他にも、冬の寒さに向けて旅館の温め方なども学んでいる最中です。薪ストーブや灯油ストーブで館内を温めるのですが、心地よい温度を保つコツがあるのですよね。薪を入れるタイミングや給油も考えなければなりません。

ーー周辺の方たちとの交流はどうですか?

宋:奈川地区の方たちとは、定例会などの町内会を通したり、亘さんを介して少しずつ交流しています。亘さんが、地域の特産品の開発やグリーンツーリズムの推進なども行っているので、そのつながりから、農家さんと連携して農泊の体験イベントなども開催しました。

松本には、結構中国の方もいて、その方たちとの交流もあります。今回解体工事を請けおってくれているのも交流をきっかけに紹介してもらった方なんですよ。

宿泊だけでなく、地域の暮らしと自然を満喫できる体験型の宿へ

ーー現在は改装中とのことですが、どのような宿になっていくのでしょうか?

宋:もともと亘さんも少しずつ改修はしてくれていたので、基礎はすごくしっかりとしている建物なんです。昭和的な建物を守りながら、私たちは、ウォシュレットのトイレにしたり、食堂をきれいにしたり、お客さんが過ごしやすい旅館を目指しています。

ーー今後はどういった場所にしていきたいですか?

宋:単に宿泊を提供するだけでなく、地元の暮らしや自然を体験できる場を目指しています。

この地域は、上高地や乗鞍、木曽などへのアクセスが良く、豊かな自然資源に恵まれています。長野の森林エリアの暮らしを感じながら、自然の魅力を存分に体験できるツアーなども進めていきたいです。

また、日本を2〜3度訪れる深堀り旅行を楽しむ海外の方たちにも需要があると考えています。実際に今年は秋に海外の方がたくさん来ており、紅葉を満喫していました。家族連れの外国人旅行客にゆっくりと滞在して、長野の自然を楽しんでもらえたらうれしいですよね。

あと、冬はとにかくスキーですね。今年は雪が多く、インバウンド需要なども期待しています。

奈川の地域はまだまだ隠れた魅力がたくさんあると感じています。野麦峠スキー場もありますし、地元の豊かな資源や奈川の魅力をSNSやネットを通じてPRしていきたいです。

ーーすでに予約なども埋まり始めているのですか?

宋:現在は改装中ですが、年始からは予約があり、賑やかになりそうです。友人たちにもスキーをしに来てもらう予定です。

「山荘わたり」は、野麦峠のスキー場を楽しんでもらうために建てられた宿だと思うので、まずは、この冬に奈川でスキーを楽しむところから盛り上げていきたいです。

ーー「山荘わたり」の譲渡が決まり、神奈川から長野へと移り住んだ宋さん。パートナーの劉安琪(リュウ アンキ)さんと共に、奈川での生活に馴染みつつあるようです。

お二人の夢の実現は奈川地区の地域活性にもつながるでしょう。今後の活動に期待が高まります。

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