成約案件インタビュー

【成約事例インタビュー】「地方でまちづくりに携わりたい」2年越しに魅力的な事業に出会い、移住を決意。宿泊事業承継までの道のり

2021年9月、千葉県館山市にある宿泊施設「tu.ne.Hostel(ツネホステル)」がrelayにて後継者募集を開始しました。

同施設を承継することになったのは、10年近く都内の学習塾で働いてきた山田祐稔さん。

数年前から地方移住を検討してきた山田さんですが、魅力的な仕事がなかなか見つからず、移住に対して二の足を踏んでいたといいます。そんなときに出会ったのがツネホステルの後継者募集記事でした。

後継者となることを前提に、2022年6月頃からtu.ne.Hostelのスタッフとして働き始めた山田さんは、2023年3月、ついに漆原さんから事業オーナーを引き継ぎました。今後も館山のまちづくりの一端を担うお二人にお話を伺いました。

譲渡者:「tu.ne.Hostel」漆原秀 様
承継者:山田祐稔 様
聞き手:relay編集部

街の活性化に貢献するも、わずか3年で承継を決意した理由

ーー漆原さんが後継者を探そうと思ったきっかけを教えてください。

(譲渡者)「tu.ne.Hostel」代表 漆原秀様(以下、敬称略):もともと「館山という街を元気にしたい」と思い、48歳でツネホステルを立ち上げました。館山内では「ツネホステルができてから街が変わって活性化してきたね」と言っていただくことも増えました。

ただ、今51歳で、5年、10年先を考えると、白髪のおじさんがやっているツネホステルのイメージが持てなくて(笑)。30代ぐらいの方であれば、ご自身の成長に合わせて事業を担っていただけるのではと思って後継者を募集しました。

ーー今後を見据えて、若い方に任せていきたいという思いが強かったんですね。

漆原:そうですね。当初は社員採用も選択肢の一つにはあったんですが、やはり「この街を元気にしたい」という本来の目的を叶えるためには、雇われ人よりは、事業を自分で立ち上げ・育てられる人をこの街に増やしていきたいと思い、事業承継という形をとりました。

ーー事業承継は初めてのご経験とのことですが、お顔やお写真がオープンになる事業承継の形に抵抗感などはありましたか?

漆原:むしろ私の素性やツネホステルを立ち上げた思いが伝わった方が良いなと思っていたので抵抗感はまったくありませんでした。通常のM&Aサイトだと、どうしても利回りの話などになりがちなところを、relayさんは「思いを伝えて、つなぐ」みたいなニュアンスを感じられたので、ぜひ掲載してみたいなと思いました。

自身のSNSで後継者募集するも不発。relayを通じて任したい人に出会えた

ーー募集には複数の方からお問い合わせがありましたが、山田さんに引き継ぐことを決めたきっかけを教えてください。

漆原:実はrelayに掲載する半年くらい前に、個人的にSNSで後継者募集をしたことがありました。3組ぐらい見学や面談の対応をしたんですが、ちょうどコロナ禍のタイミングだったこともあり、“東京脱出への憧れ”的な方が多かったと言いますか…。

一方、relayさんを通じてお会いした山田さんは、大学卒業後10年間同じ会社で真面目に働いてきたタイプの人でした。真面目で素直な人は伸びると思っているので、この方なら任せられるかもって思いましたね。

ーー実際に採用されて一緒に運営を始められたのはいつからですか?

漆原:2022年6月からです。初めは普通の新入スタッフとして現場を経験してもらい、繁忙期の7月下旬〜8月の山場を一緒に働いてもらいました。「承継をいつまでにする」という期限も特に決めず、機が熟したら言ってねという感じでした。

いきなり承継だとお互いに身構えたかもしれないですが、とりあえず社員として入ってもらったので、お互いに気楽に進めることができました。

ツネホステルができた背景や想いを知り、「ここで働きたい」と思った

ーー山田さんは以前都内にお住まいだったそうですが、もともと移住を検討されていたんですか?

(承継者)山田祐稔 様(以下、敬称略):はい。10年近く学習塾業界で働いて、コロナも重なって次にやりたいことを考える時間と機会が増えたタイミングでもありました。最初から館山市だけが選択肢だったわけではなく、地方移住をして地方で何か新しい事業をやってみたいなと漠然と思っていたので、地方移住イベントなどにいくつか参加していました。長野や瀬戸内なども視野に入れる中で、館山市が候補の一つに上がりました。

ーーなぜ館山がいいなと思うようになったんですか?

山田:実家が千葉県柏市で、長男ということもあり、何かあったときにすぐ実家に戻れるエリアだということ、なおかつ自然も豊かなところが魅力的だと思いました。

最初は館山がある南房総エリアにとても魅力を感じ、鋸南町の地域おこし協力隊の方やNPOで移住促進活動されている方に会うために、2年前に2泊3日で南房総に足を運びました。ただ、2年前は自分が魅力的と思える仕事と出会うことができず、移住は先延ばしになっていました。

そんな時、改めて求人サイトなどを探す中で、条件ではなくストーリー重視のrelayのサイトにたどり着きました。ツネホステルの記事を見つけたときは、「2年前に訪れた南房総エリアで仕事募集をしているところがある!」とすごく嬉しかったのを覚えています。

ーー応募後、オンライン面談でお互いの認識をすり合わせた後、1泊2日でお仕事体験をされたそうですね。実際にツネホステルに行って漆原さんとお話してみてどうでしたか?

山田:記事内の写真のとおり、建物も内装もかわいらしい感じでした。漆原さんからは、どういう思いでツネホステルができたかなどの背景のお話を改めて聞かせてもらいました。

今回の募集が宿泊業のスタッフやオーナーというだけではあまり気持ちが動かなかったかもしれないですが、実際に現地に来て、ここができた背景や街の中での立ち位置、これからの展望などを聞いて、より一層ここに携わってみたいなという想いが深まったと思います。

移住者コミュニティもあり順調な日々。働き始めて1年足らずで承継へ

ーーお仕事体験から入社まで7ヶ月ほどかかったようですが、その間は連絡を取っていたんですか?

山田:頻繁にというわけではないですが、逐一自分の状況を報告していました。その間に漆原さんからゲストハウスの本をプレゼントしてもらいました。

漆原:ゲストハウスの立ち上げ経験者の実例集みたいな本なんですが、これを着任前に読んで気持ちを高めておいてくれたらなと思って(笑)

ーーいいですね!実際に館山に移住してみてどうですか?

山田:館山は移住してくる方も多く、移住者のコミュニティがいくつかあるので、そこに迎え入れていただきました。なので、ゼロからコミュニティに入っていったり、ゼロからお友達づくりをしなきゃという感じもなく、おかげさまで知り合いもたくさんできて、楽しくやっています。

ーー前職とは異なる業界に移られて、不安などはありましたか?

山田:学習塾もサービス業で、子どもや親御さんと接してきたので、そこまでギャップはなかったです。前職も前職なりの大変さがあったので、業種は変わっても、つらさも楽しさもそれぞれあるなと感じています。

ーー2023年3月に正式に事業を引き継がれたのですよね。

漆原:承継のタイミングはもっと先なのかなと思っていたんですが、意外と早く「そろそろ」と本人が言い出したので頼もしいなと思っています。

ただ、この土地建物は僕の所有のままで、僕もここが続いてもらわないと土地建物を維持していけないので。形を変えて一蓮托生で、50代と30代の二人で強い宿にしていきたいと思っています。

事業承継は「地方移住」と「新たな挑戦」の両方が叶う選択肢

ーー今回relayを使って事業継承を経験した感想を教えてください。

漆原:これまで事業承継というと「高齢になって後継者がいないからするもの」という少しネガティブなイメージが強かったと思うんですが、特にrelayさんがやろうとしていることは新しい起業支援の形でもあるなと思いました。

今の僕にしかできないことをやるためには、寂しいけど、誰かに譲らないといけないタイミングもあるんだなと気づかされました。今オーナーをやっている方々は、元気がなくなってから事業承継をするのではなく、もっと積極的に、元気な今だからこそ、前向きな気持ちで次の世代に事業を渡していくといいんじゃないかなと思います。

山田:2年前にさまざまな地方に足を運んでもやりたいと思えることが見つからなかった中で、自分で事業ができるというわくわくする選択肢が一つ生まれたことが大きかったです。新しいことに挑戦してみたいという人のハードルが下がる選択肢があるのはすごく嬉しいことだと思います。

また、地方移住と事業承継はとても相性が良いとも思いました。「地方移住したいけどどうしよう」と悩んでいる人の背中を押す機会を作っていただきました。

館山のまちを好きになるきっかけを作りたい

ーー山田さんは今後ツネホステルをどんな場所にしていきたいですか?

山田:旅人の間で評判になって、「館山っていいね」と言ってくれて、館山の街を好きになってくれる人を増やしたいですね。館山への二拠点居住や移住のきっかけ作りができる宿にできたらいいなと思います。

ーー素敵です!漆原さんはこれからやっていきたいことはありますか?

漆原:このツネホステルと同時にスタートした館山市のイノベーションまちづくり事業が2023年から本格稼働するので、まちづくり事業に注力したいです。一つのホステルからエリア全体の価値を高める活動にシフトする予定です。エリアの価値が上がっても一つ一つの宿や飲食店が輝いていないといけないので、ヒロ(山田さん)には、まずツネホステルを磨き上げてもらい、いずれはまちづくりも一緒にできたらいいなと思っています。

ーー素敵なお話をありがとうございました!

自身のSNS以外の手段で後継者募集をしたからこそ、知り合いづてではなかなか出会えなかったタイプの山田さんと出会えた今回の事例。

ツネホステルを中心としてさらなる活気をみせる館山のまちづくりに、今後も目が離せません。

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