成約案件インタビュー

【成約事例インタビュー】諦めかけた葬儀屋の仕事。長崎から宮崎に移住し、事業承継候補者に

2022年8月、宮崎県えびの市の「有限会社えびの公善社」がrelayを通して後継者募集をスタートしました。霧島連山の麓の街に根ざした葬儀屋を50年以上経営していたのは、松井昇(まついのぼる)さん。

今回この葬儀屋の後継者候補となったのは、長崎県で同じく葬儀屋を家業としていた和田敏也(わだとしや)さんです。弟が実家を継ぎ、別会社から声をかけられ葬儀業を営もうとするも、コロナ禍で業績が悪化。葬儀業への参画を諦めることになります。そこで、長崎で飲食店を経営しようとインターネットで検索したところ、「有限会社えびの公善社」の後継者募集情報にたどり着きました。オープンに後継者募集をしたからこそ出会ったお二人に話を伺いました。

譲渡者:「有限会社えびの公善社」松井昇様
承継者:和田敏也様
聞き手:relay編集部

地元に根付いた葬儀屋を、未来につなげるために

ーー(聞き手)relay編集部(以下、略)松井さんはなぜ事業の承継を検討されたのでしょうか?

(譲渡者)「有限会社えびの公善社」松井昇様(以下、敬称略):創業50周年を超え、地元のお客様にご利用いただき、地域に根ざした葬儀屋となりました。一方で、70歳を前に体力や気力が落ち込むようになり、承継の必要性を感じ始めました。しかし、承継を考えていた長男は10数年前に突然死してしまい、承継者がいない状況でした。雇用している社員もいるので、どうにかして事業を畳まずやっていかなくてはならないと考え、承継できる人を探すことにしました。

ーー今回、relayで後継者募集をされた経緯を教えて下さい。

松井:後継者を募集するにあたり、国や県の事業継承事業なども活用しました。relayは、えびの市の商工会議所の方が紹介してくださいました。業務の内容や財務的な部分だけでなく、これまでの歩みや思いまでオープンに発信いただけるのはとても良いなと思いました。金銭で売買する承継というよりも、背景や思いを理解し、引き継いでいく印象を受けましたね。

「飲食店 事業承継」の検索で、葬儀屋につながった

ーー和田さんは、家業が葬儀屋なのですね。

(承継者)和田敏也様(以下、敬称略):長崎県で、父と共に葬儀社を経営していました。会社は弟が引き継ぐことになり、私は別の葬儀業にチャレンジしたいという会社から声がけがあり、手伝っていたんです。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、業績が悪化。葬儀業への参画を諦めることになりました。

葬儀屋から離れないといけないのかな…思い切って、喫茶店をやってみてもいいかな、と考えていました。そこで「飲食店 事業承継」でインターネット検索したんです。relayが最初にヒットし、諫早にある喫茶店の情報を見つけました。その真下に偶然掲載されていたのが、「有限会社えびの公善社」でした。

ーーそうだったんですね!運命的な出会いですね。記事を見て、どのような思いでしたか?

和田:葬儀屋で事業承継というのは考えたこともなかったので、とても驚きました。最初は興味本位で記事を読みましたが、これまでの経緯やご家族のことまで赤裸々に語られており、とても好感を持てました。同じ業界に20数年いましたので、お客様への思いなどもかなり理解できましたし、事業承継を抜きにしてもお手伝いしたい!という思いになりました。家族にも「葬儀屋の話をしているときが生き生きしてる」と言ってもらえ、背中を押されましたね。

ーーその後どういった経緯で、えびの市に移住し、働く事になったのでしょうか?

和田:まず2022年9月に1度会いに行きました。そして、10月に再会。11月の頭にはえびの市に引っ越し、11月の終わりから働いています。

後継者の和田敏也さん

ーー最初に会ったお互いの印象は、いかがでしたか?

松井:違和感が全くなかったですね。しっかりと話される方で信頼感があるな、という印象を受けました。長崎を離れて頑張るんだという強い意志も感じました。妻も、和田さんなら大丈夫だと言ってくれました。

和田:実は記事を読んで、松井さんは厳しい方なのかな、という印象を受けていました。しかし実際に会ってみると、とても優しく温和な方で。これまで会ったことがないタイプだな、と感じました。この方のためにやらなくては、という思いが一層強くなり、移住を決意しました。

ーー縁もゆかりもないえびの市。移住にあたって、困ったことは有りませんでしたか?

和田:一番は、住む場所を探すことに苦労しました。実は、もう少し早く移住したかったのですが、縁も土地勘もないえびの市。なかなか思うように住む場所を見つけることができませんでした。最終的に、松井さんの妹さんが管理する借家をお借りでき、無事に移住できました。継承者が移住を伴う場合、移住支援のサービスがrelayに付随してあるととても助かると思います。

従業員に寄り添い、顧客に寄り添う、葬儀屋に

ーー和田さんが後継者候補としていらっしゃると聞き、従業員の皆さんの反応はいかがでしたか?

松井:やっぱり最初は戦々恐々としていましたね。「社長大丈夫なの?」といった声もあがっていましたし、正直ぎくしゃくするシーンもありました。事情や経緯をしっかり説明し、皆で協力しあってやっていくんだ、ということをしっかり伝えることを意識しました。数ヶ月たった今、和田さんの熱意を感じ、信頼関係も構築されました。にこやかに、冗談交じりにコミュニケーションを取っていますよ。

承継者の松井昇様

和田:地元の人間ではなく、言葉も異なりますので、最初のうちはコミュニケーションが難しかったですね。地元の言葉でないと丁寧に話していても、冷ややかに聞こえてしまう側面があったようです。県外出身の従業員の方に通訳のような形で入っていただき、皆さんの意見を伺ったり、こちらの本意をお伝えしていただいたりしましたね。今では、信頼関係が構築できてきていると感じています。今後も年齢や属性などに関わらず、丁寧な対応をしていきたいと思っています。

ーー今はどんなお仕事を担当されていらっしゃるのでしょうか?

和田:葬儀に関する業務を全体的に対応しています。葬儀は地域によってかなり差がありますので、そこを学びながら実業務に取り組んでいる状態です。これまで松井さんと共に歴史を築いてきた従業員の皆さんの思いを汲みながら、現代のお客様のニーズに合わせたサービス展開をしていきたいと思っています。

思いを引き継ぎ、地域に根づいた究極のサービス業を

ーーお二人にとって葬儀屋のお仕事とは、どんなお仕事でしょうか?

松井:このお仕事は、お支払いのときに「ありがとう」とお客様に言っていただけるんです。大切な方を亡くし、悲しみのどん底にいる方のお手伝いをする、尊い仕事。そんな状況で「あなたにお願いしてよかった」「助かりました」という言葉をいただけると、本当にやっていて良かったと心底思いますね。

和田:松井さんのおっしゃる通り、悲しみの中にいらっしゃるご遺族をお手伝いできる、誇るべき仕事です。葬儀業は「究極のサービス業」だと思いますね。

ーー今後どんな葬儀屋にしていきたいですか?

和田:えびの市は、どんどん過疎化が進んでいます。要因の一つとして、若い方がやりがいを持って働ける場が少ないことがあるのではないかなと思っています。我々の仕事の魅力を感じていただけ、誇りをもって働ける職場づくりをしていきたいですね。

松井:和田さんはきっとやってくれる。期待大です!

ーー最後に読者へのメッセージをお願いします。

松井:relayとつながり、掲載していただけたからこそ、和田さんと出会うことができた。贅沢なことだとは思いますが、「気持ち」を承継していただけるのが本当に嬉しい。この仕事は気持ちが一番大事なんですよね。

和田:時代にマッチしたインターネットでの公募。検索もしやすく、事業の背景もわかりやすかった。そして何より、思いを引き継ぐことができるということが、とても大事な部分だったなと感じています。

「思いを引き継ぐ」ということは「バックボーンをどこまで理解するか」ということ。ゼロからの起業ももちろん大変ですが、事業承継は初期投資が抑えられる反面、別のベクトルでの努力が必要だと感じています。これまでの歴史を理解し、今のお客様を維持しながら、自分がやってきたことややりたいこととすりあわせていく必要がある。強い熱意を持って、努力していきたいですね。

relayを通じた運命的な出会いから、第三者承継だからこその課題と乗り越え方。今後の展望や大事にしたいことなど、詳しくお話いただきました。一度は諦めかけた葬儀屋としての事業展開が、relayによってつながり、バトンが渡されようとしています。これから先、どんな「ありがとう」が紡がれるのか、今後の歩みも楽しみにしています。

(relay編集部)

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