成約案件インタビュー

【事業承継】販売累計15万本突破! 「ジャリパン」を受け継いだ、Uターン経営者の1年間。

宮崎名物の「ジャリパン」。

スーパーや学校売店を中心に宮崎市内で販売され、地元の人に愛され続けているソウルフードです。そんなジャリパン発祥の店である老舗パン屋・ミカエル堂は、2023年3月に設備の老朽化や材料費の高騰等を理由に惜しまれながら休業しました。

オーナーの都成(となり)さんはオープンネーム事業承継「relay(リレイ)」にて後継者を募集し、40名以上の応募者の中から、大津 伸詠(おおつ のぶえ)さんに引き継ぐことに決定。東京でデジタルマーケティング支援会社を経営していた大津さんは、事業承継を機に地元である宮崎にUターンし、ジャリパン専門店としてミカエル堂を再スタートさせました。

生まれ変わったミカエル堂の始動から1年。いまや販売本数は累計15万本を突破するほどの人気店です。

「もともと、飲食事業に絞って探していたわけではありませんでした」

パンづくりも飲食経営もまったくの未経験だった大津さんが、地元の味を残すために行った工夫と、事業を通して実現させたいこれからの未来について、お話を伺いました。

承継者(右):株式会社egumiculture 大津 伸詠さん
聞き手(左):株式会社ライトライト 代表取締役 齋藤隆太

「話題になるのは最初だけ」オープンから1年、ミカエル堂の現在地。

 ーオープンして1年が経ちましたが、率直な今の気持ちをお聞かせください。

大津さん:いい感じです(笑)。

ミカエル堂のプレスリリースより

 ーいい感じ、素敵ですね、ジャリパンの販売が1年で15万本突破したというプレスリリースを読みました。最初は店頭販売のみ、途中から卸販売をはじめて徐々に比率が変わっていますよね。これは元々戦略としてあったんですか?

大津さん:最初から考えてはいましたね。周りからも口酸っぱく「売れるのは最初の3ヶ月だけだよ」と言われていたんです。だから意識はしていましたが、実際にオープン初日の大混乱を目の当たりにしたときに、「あ、これはもしかしたら3ヶ月ももたないかも知れない」とリアルに感じました。

 ー本当に、すごい人の数でしたもんね。

大津さん:もともと瞬間冷凍したパンを納品するプランはありましたが、資金面と機械のオーダーを考えるとまだまだ先の話だと思っていたんです。結果的に機械を導入したのはオープンから4ヶ月経った2025年3月でした。

ミカエル堂のオープン初日(2024年11月14日)

 ー卸販売先は、以前のミカエル堂さんの取引先を引き継がれたんですか?

大津さん:既存の卸先も新規もあります。オープン前に一度だけ東京の展示会に出て、そのときのご縁からお取引いただいている県外の方もいます。

 ー右肩上がりに卸販売数が増えてますが、ご自身で積極的に販路開拓をされたのでしょうか?

大津さん:営業はほとんどしていません。ありがたいことに、うちのジャリパンを取り扱いたいとお声がけいただくパターンが多いです。あと、言い方が少し難しいんですが、ちゃんと条件の合うところにだけ卸すようにしています。製造量が限られているので、取引先に条件を合わせると疲弊してしまう可能性が高いんですね。だから、販売数が増えているのは取引先を増やしているというより、今お付き合いしているところの取引量が増加しているんです。

 ーなるほど、お話を聞いていると概ね経営としては計画通りに進んでいる印象を受けますが、この一年間で大変だったことはありますか?

大津さん:順調ではあるんですが、最初の頃はやっぱり何もわからないまま進んでいました。初日は200本くらい売れる計算でいたら、都成さんから1,000本くらい作らないと駄目でしょって言われて……。一日にいくつ売れるかもまったくわからず、感覚が掴めていませんでした。

 ー昔のミカエル堂さんとは価格も状況も違うから単純比較はできないでしょうけど、当時の数字とかは参考にするものなんですか?

大津さん:めちゃくちゃします! 最初に都成さんから決算書や納品書などの資料をいただきました。データはないから、手計算でジャリパンが年間に何本製造されていたかを計算して、参考にしていました。

 ーそれって事業承継のいいところのひとつですよね。飲食・販売未経験で、全くゼロからのメニューだったら数字の予想が立てられないですもんね。

ミカエル堂の休業から、わずか1年半でオープンできた理由。

 ー改めて、大津さんがミカエル堂を承継するまでのことを振り返りたいんですが、後継者募集を知ったきっかけは何でしたか?

大津さん:ネットで検索したらrelayのサイトに辿り着いて、ミカエル堂の記事を見つけました。「宮崎 事業承継」で調べたと思います。

 ー東京で事業をされていたのに、なぜ宮崎で事業承継を?

大津さん:事業承継がマストだったわけじゃないんです。会社もある程度安定して、子育てもキリの良いタイミングだったときに宮崎にUターンするということを考え始めました。せっかくなら、目的もなく帰るより何か事業を持てたら、さらに楽しいんじゃないかと考えていました。

 ーなるほど。事業承継は選択肢のひとつだったんですね。事業承継もありだなと考えるようになったのはいつ頃ですか?

大津さん:2020年ごろ、起業家の先輩が福岡でお豆腐屋を継いだとか、そういう話を割と身近に聞くようになって自分も考えるようになりました。たしかミカエル堂の記事を見つける半年くらい前から、relay以外のサイトにもいくつか登録していました。

 ー問い合わせたことはありましたか?

大津さん:いいえ、ノンネームのサイトだと「なんか面白そうでも、実態がわからない」と思って、問い合わせるまでに至りませんでした。一方で、relayで読んだミカエル堂の記事には、その時に私が知りたい情報がすべて載っていました。

 ー情報がオープンになっていたおかげで、問い合わせのハードルが下がったということですね。大津さんの会社の事業とミカエル堂は業種がまったく違いますが、その辺りはどうお考えだったんですか?

大津さん:最初は何のイメージもできてなくて、唯一「宮崎」を検索条件にして事業承継の案件を見ていました。ミカエル堂は条件的に私には無理だろうと思っていましたが、なぜかすごく惹かれるものがあったんですよね。

 ー実際に問い合わせをされてから、事業承継に至るまでに大変だったことはありますか?

大津さん:とてもスムーズに進んだと思っています。relayのコーディネーターさんがこまめにコンタクトを取ってくれて、質問や疑問はメールでも電話でもすぐに解消することができました。初回のオンライン面談の日程もすぐに決まり、自分の中の熱が冷めないうちに段取りよく進んだのが良かったです。

 ー事業承継でネックになりやすい部分として、資金面の問題があります。大津さんが難しいと感じた部分や、ご自身で工夫されたことがあれば教えてください。

大津さん:資金面はあまり悲観的には考えてませんでしたね。資金調達は様々な方法があるから、何かしら適切なタイミングで適切な手段を取ればいいという気持ちでいました。自己資金で出せる金額も明確にしていましたし、まあ何とかできるだろうという見立てではいました。

 ー元々、法人での借り入れ経験はおありだったんですか?

大津さん:信用金庫が1回と、あとは公庫で2回あります。早い段階で、付き合いのあった公庫に相談をしたら、地元の銀行に問い合わせた方がいいとアドバイスをもらって、最終的にはそちらで融資を受けることができました。

 ー銀行は事業承継に関する融資について、体制が整っていないところも多いと聞きます。 実際に事業承継の相談をしたときの反応がどんなものだったか、覚えてますか?

大津さん:手間取ったとか対応が遅かったとか、そういうのはまったくないですね。というのも、最初に都成さんに会う現地面談の際に銀行にも顔を出していて、簡単に事情を話して「もしかしたらお力添えをいただくかも知れない」という相談をしていたんです。その後、都成さんの奥様がミカエル堂を担当していた営業さんにつないでくれて、一年間かけてコンタクトを取っていたのが融資がスムーズに進んだ要因だと思います。

 ー素晴らしいですね。ミカエル堂が休業してから1年半、譲渡契約からは半年でオープンされましたが、このスケジュールは想定通りですか?

大津さん:想定外でした。5月に契約を締結したあと、本当は少しゆっくりやろうと思っていたんです。でも、結構早い段階でメディアからお問い合わせをいただいて、ミカエル堂とジャリパンの復活を待ってる人がいるんだと実感しました。「ゆっくりやってる場合じゃないな」と オープン日をある程度決めて、逆算しながら準備を進めました。

ミカエル堂の100周年記念に向けてやりたいこと。

大津さんがミカエル堂の事業とは別で手がけている橘通のdough.(ドー)

 ー橘通にあるdough.(ドー)では、曜日限定のカフェもやっているんですよね。

大津さん:今は週2回ほどですが、ミカエル堂のポップアップカフェとして営業しています。ジャリパンの販売もしているので、店舗まで買いに来れない人にもぜひ利用してほしいです。

 ーどうしてあの場所でカフェをやろうと思ったんですか?

大津さん:物件に出会ったのはミカエル堂の店舗を探しているときでした。少し手狭だったからミカエル堂で利用するのは無理そうで、でも手放すのは惜しい面白い物件だと思ったんです。活用できる方法を考えて、小規模飲食店に特化したレンタルスペースになりました。ミカエル堂のポップアップカフェはその第1弾です。

 ーミカエル堂の営業とカフェの運営、雇用も順調に増えてますよね。今スタッフさんは何名いらっしゃるんですか?

大津さん:15名くらいですね、バックオフィスを含めて社員が5名。ほかはパートとアルバイトの雇用です。

営業の合間に店舗スタッフの方と談笑する大津さん

 ー採用面ではどういった工夫をされていますか?

大津さん:今の店長は、元々橘通のカフェでバイトをしていた子です。チラシを見て応募してくれました。noteの記事を見て応募してくれた社員もいます。

 ーなるほど。SNSでは募集をしていましたか?

大津さん:Instagramで募集して、短期のアルバイトから入ってくれる子も多いです。割合的にはほとんどがInstagramからなので、採用コストはほぼゼロです。

 ーミカエル堂さん、とても好調ですね。この先やりたいことや、すでに手掛けていることなどがあれば教えてください。

大津さん:宮崎県内でも「ジャリパンの取り扱いをしたい」という声にまだ100パーセント応えられてない状況なので、そこに応えられる生産体制をつくっていきたいです。あと、ジャリクリームだけで勝負したいんですよ。

 ージャリクリームだけ?

大津さん:パンに塗るチョコスプレッドみたいに、ジャリパンのクリームだけを売りたいんです。まだ構想段階ですけど、おうちでの楽しみ方を提案できれば需要はあると思っています。

 ーそれは楽しみですね。

大津さん:ジャリパンに関する商品の展開も考えつつですが、2027年でミカエル堂は100周年を迎えます。そこに向けてジャリパン以外にも何か新しいものをご用意したいですね。

大津さんにとって、ミカエル堂の事業承継は地元に仕事をつくるための「選択肢のひとつ」でした。承継は単なる事業継続の手段ではなく、人生や地域を豊かにする新しい選択肢です。

私たちが目指すのは、事業承継が人生の次のステージを選ぶ「新しい当たり前」になる社会。日本には、ミカエル堂のように後継者に引き継ぐことで価値が再定義され、輝きを取り戻せる事業がたくさん眠っています。

より良い事例を生み出すため、relayでは情報をオープンにしスムーズなマッチングと伴走支援を強化します。そうして、想いと共に事業が受け継がれ、地域に活力が生まれる社会を実現していきます。

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