後継者募集記事

山形県西川町「手打ちそば杉乃屋」から蕎麦打ちの技術を受け継ぐ後継者を募集!

山形県のほぼ中央部で、「月山」と「湯殿山」という出羽三山を構成する山々を擁している西川町。町の面積の約9割が山間部という、とても自然に恵まれた地域です。山菜やきのこといった多種多様な山の恵みや、日本一遅い7月末まで滑走可能なスキー場など、環境を活かした多くの魅力が点在しています。

かつて「手打ちそば杉乃屋」が営業していた吉川地区は西川町の最東端、隣接する寒河江市との境に位置します。最寄りの山形自動車道西川インターチェンジからは車で約6分と、遠方からも比較的アクセスしやすいエリアです。

長年この地で蕎麦を打ち続けてきた大沼さんから、そば打ちの技術を引き継ぐ後継者を募集しています。

大工から蕎麦打ちへ、異なる職人の道

西川町は、日本でも有数の豪雪地帯として知られます。この地で2003年10月から「手打ちそば杉乃屋」という屋号を掲げ、手打ち蕎麦店を営んできた店主の大沼さん。そのルーツは意外なものでした。

大沼さん「15歳の頃に大工見習いとして修行を始めてから、53歳まで大工一筋でやってきました。この店も、自分で取り寄せた貴重な木材を使ったり、枝を自分で加工して内装を作ったりとこだわっています。」

大工職人として働きながら、趣味として蕎麦打ちに没頭するようになっていった大沼さん。その腕前は徐々に評判を呼び、「全日本素人そば打ち名人大会」に出場した経験もあるそうです。観光客へ蕎麦打ちを指導するなど、次第に蕎麦打ち職人としての活動も多くなっていきました。

そのような状況の中、奥様からの「手打ちそばのお店を出したい」という言葉を受け、大沼さんは大工を辞めて蕎麦屋を始める決意をしたそうです。

大沼さん「この店舗兼住宅が完成したのが2003年です。そのタイミングで大工を卒業し、蕎麦打ち職人として生計を立てるようになりました。」

純和風建築の店舗兼住宅には囲炉裏もあり、窓からは寒河江川を見下ろすことのできる落ち着いたロケーションが広がっています。

独学で身につけた蕎麦打ちの技

実際に大沼さんが蕎麦を打つ所を拝見していると、一つ一つの工程に詰め込まれた技術と丁寧な仕事ぶりが印象的でした。

大沼さん「使っているそば粉は、全国様々な蕎麦を食べ比べた結果、北海道で幻のそばと言われている『ぼたん蕎麦』を選びました。独自の配合にして取り寄せています。歯切れを良くするため、殻も少しだけ配合しているんです。」

水の温度から段階的な粉の混ぜ方、麺棒の使い分けに至るまで、すべての工程において驚くほどの「コツ」が凝縮されています。その一つ一つを、実際に手を動かしながら丁寧に説明してくださいました。どの場面を切り取っても無駄がなく、洗練された所作には目が奪われます。

大沼さん「例えば、延ばした生地のほんのわずかな凹凸でも、指先でなぞるだけで感じ取ることができます。それは大工時代の経験があってこそなのです。大工の仕事で培った技術は何の仕事にも応用できると思っています。」

約2kgの蕎麦を打ち終えるのにかかる時間は約1時間半。全身を使う重労働ですが、繁盛している日は1日に2回、3回と蕎麦を打つこともあるそうです。

そして、大沼さんが打った蕎麦を調理するのは奥様です。開店から今まで長い間、奥様が厨房を切り盛りしてきました。

蕎麦つゆは、半年間寝かせたかえしをベースに、かつお節からとったスープと合わせてさらに熟成させるというこだわりの味なのだそうです。

痛む体に限界を感じ、やむなく閉店

大沼さんご夫妻が作る蕎麦はなんと言っても香りがよく、ちょうど良い歯ごたえで喉越しも抜群です。ネギやわさびといった薬味に加えて、大根おろしがさっぱりとしたアクセントになっていました。

開店から今日に至るまでの約19年間、蕎麦職人として多くのお客さんに自慢の蕎麦を振る舞ってきた大沼さん。しかし、杉乃屋は2022年12月を持って閉店することになりました。

大沼さん「もう体があちこち痛くなってしまって、全身を使って打たなければならない蕎麦打ちは難しくなりました。」

このような事情からやむなく閉店を決意した大沼さん。常連のお客さんからは、一様に閉店を惜しむ声が挙がっていたそうです。

大沼さん「たくさんのお客さんから、残念だと言われました。嬉しいことですね。」

このお店を始めた頃は、蕎麦が足りなくなったり、思うように蕎麦打ちができなくなったりと、さまざまな苦労をしたこともあったという大沼さん。しかし最近では、関西方面など遠方から杉乃屋の味を求め、何度も訪れるお客さんが現れるまでになっていたそうです。

町が移住や店舗探しもサポート

大沼さんご夫妻は閉店後もこの店舗兼住宅で生活する予定です。そのため、大沼さんの技術を引き継ぎたいという方には、西川町が全面的にサポートします。住居や、店舗として利用できる物件探し、移住・開業にあたって利用できる制度の提案など、引き継ぐ方の要望に合わせたプランを提示してもらえます。1人きりで全てを調べる必要がないため、県外からの移住であっても安心できる環境です。

後継する方が、大沼さんから蕎麦打ちの技術を引き継ぎ西川町で開業する場合、「杉乃屋」の屋号や仕入先の引き継ぎ、客席テーブルなど、希望するものは差し上げるのでぜひ使ってほしいと大沼さんは話します。

最後に、どのような方に来てほしいと考えているのか、大沼さんに想いを伺いました。

大沼さん「真剣な気持ちで蕎麦に向き合う方に継いでほしいですね。お客様に蕎麦を食べてもらう以上、毎日全身の力を使って蕎麦を打ち続けていかなければいけません。中途半端な気持ちでは続けていけないでしょう。」

お話を伺っていても、ご自身のこれまでの経緯やこの先への想いよりも、とにかく蕎麦に関する話題が尽きない大沼さん。ここまで蕎麦を愛しているからこそ、多くの人に愛されるお店へと成長したのだと感じました。

西川町による頼もしいバックアップの元で、誰よりも蕎麦の魅力を知り尽くした大沼さんから蕎麦打ちの技術を引き継ぎ、この地で独立を目指してみませんか?

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