熊本県球磨郡あさぎり町にある「谷脇ガレージ」。新車・中古車売買、車検整備、鈑金塗装、カーリースなどの事業を行っており、地元の人の交通手段を支える拠点として愛されています。
代表の谷脇浩充さんは、この場所で約40年にわたって事業を続けていた先代の田中さんから2023年に事業を引き継ぎ、これまでのお客様を大切にしながら売上を伸ばしています。
今回は承継に至った経緯や思い、今後の展望について谷脇さんにお話を伺いました。
次のステップを踏むために、事業承継を決断
谷脇さんは熊本県の出身。横浜にある大手自動車メーカーの工場に勤務した後にUターンをし、熊本でも技術を磨き、独立をしました。
谷脇浩充さん「以前は熊本県錦町で同様の事業をしていましたが、そこは物件が賃貸だったんです。先々のことも考えながら今よりステップアップできる場所を探していたところ、所属していた組合から数件ご紹介いただきました。
立地や金銭面での条件が希望と合致したのが今の場所でした。もともと事業を営んでいた田中さんは70代だったので、ご自身の年齢と、インボイス制度など社会変化への対応を考慮して、承継を決断されたようです。町商工会の方にもサポートいただきながら、承継のステップを踏んでいきました」
売上は2倍以上に。最新の知識や技術で要望に応える
新たな一歩を踏み出した谷脇さん。承継されて良かった点はどのようなところだったのでしょうか。
浩充さん「やはり既存のお客様を引き継げた点が大きいです。もともと事前に見込みはわかっていましたが、実際売上は2倍以上になっています。また、既存のお客様が、新たなお客様をご紹介くださるのも嬉しいですね。以前の場所ではあまりやれていなかった車両販売も好調で、売上が伸びています」
一方で、難しい点や課題も多々あったといいます。
浩充さん「以前の経営スタイルとの差に対して、お客様からご要望をいただくこともあります。例えば、これまでは日曜も営業をしていたので、それを知るお客様からお問い合わせがあることも。そういった時は、経営者が代わったこと、ライフスタイルも大切にしていきたいので日曜日はお休みをしていることをお伝えし、ご理解いただくようにしていますね。
あとは、設備の老朽化も課題です。古いものも多いので、新しいものを購入するために設備投資をしなくてはならず、コストがかかる面もあるのが実情です」
承継後、クレジットカード決済など多様な決済方法も取り入れ、電子制御関連の知識や技術もアップデート。ワンストップで対応できるサービスの幅が広がり、お客様からは感謝の声が多くあがっているといいます。
お客様とのコミュニケーションを最重要視して
最も大事にしているのは、「お客様とのコミュニケーション」だという谷脇さん。お話を伺っている間にも次々と訪れるお客様に、丁寧に向き合う様子が見られました。
浩充さん「車両整備は専門的で難しいことが多いので、丁寧に説明するようにしています。ご要望通りに修理ができて、お客様に喜んでいただけたときは本当に嬉しいですね。
また、何気ない世間話も積極的にするようにしています。このあたりは農家さんが多いので、生産物の話や日常の話をする中で、お困りごとがないかを探り、ニーズにあった提案ができるように心がけています。積極的にコミュニケーションを取るからこその信頼関係と、サービス精神が大事だと思っています」
保育士をしていたパートナーの奈緒美さんは、現在は事務や洗の担当として谷脇ガレージに勤めています。二人三脚で歩みを進めるお二人の今後の展望について伺いました。
谷脇奈緒美さん「これからは私も整備士の免許を取るなど、より車の知識をつけたほうがいいのかな、と思っています。もう少し自分のできることを増やして、皆さんのお役に立ちたいですね」
浩充さん「これからは一層、地域になくてはならない整備工場になりたいなと思っています。周辺地域の同業種の方もやはり高齢化が進んでおり、若手が少ない。私自身は、中堅ならではの知識や経験を活かして、この地域を支えていきたいです。
これから事業承継を考えていらっしゃる方は、ぜひ第三者とともに進行することをおすすめします。承継の内容はもちろんのこと、それぞれの想いの部分や承継後のサポート内容などもしっかり言語化してすり合わせしておくと安心だと思いますよ」
立ち寄るお客様、電話で問い合わせするお客様、どんなお客様に対しても丁寧に迅速に対応していた谷脇さん。地域の交通としてなくてはならない自家用車を支える拠点として、これからも地域の皆様に愛され続けるのだろうなと感じました。
今後のご活躍も楽しみにしております！
