事業承継ストーリー

新たな「瀬戸内ブランド」を目指し、和菓子を通じて文化を紡ぐ商いへ。新しい時代の地域共存型経営に挑戦します。

広島県東部に位置する福山市は、瀬戸内海の中央部にあり、穏やかな気候と自然に恵まれた中核市です。歴史あるお城や文化が今でも地域に根付いています。「虎屋本舗」は江戸時代初期(1620年)から始まり2020年で創業400年を迎えました。

福山藩御用菓子司として商いを営み、明治維新を経て2度の戦火をも乗り越えてきた、歴史ある「虎屋本舗」のバトンを受け取ったのは、17代目となる高田海道(たかた かいどう)さん。2021年5月18日に代表取締役社長に就任し、次なる歴史のページを刻み始めました。

メディアを通して父の承継の想いを受け取る

虎屋本舗は代々親子承継で受け継がれており、高田さんは幼い頃から経営の話やお店の歴史をよく聞いていたそうです。先代と具体的な承継の話はしていませんでしたが、自然といずれはお店を継ぐことを考えていました。父である先代は、好きなことをさせてくれていたため、高校卒業後は家業に入らず東京の大学へ旅立ちます。「会社の経営をやる前に、国の経営をみた方が良い」と誘われ、大学卒業後は東京で不動産会社と国会議員の秘書として働きました。

高田さん「2010年の創業390年を迎えたときに、虎屋本舗がメディアに取材されていたのを当時の上司から教えてもらいました。記事にはこれまでの会社の歴史や誇りが綴られているのに加え、2020年の創業400年目に息子に会社を譲りたいと書いてありました。そこで初めて父のちゃんとした承継の思いを知り、具体的に意識するようになりました」

先代と伴走しながら経営を学ぶ日々

17代目社長高田海道さん(左)と16代目社長高田信吾さん(右)

異業種で経験を積んだ後、2013年に家業に戻り承継までの8年間様々な業務を担ってきた高田さん。和菓子屋の後継ぎは、製菓学校に入ることが多いのですが、高田さんは製菓学校には通っていなかったため、まずはお店のお菓子作りの修行を積むことに。3年ほど現場でお菓子作りの経験を積み、その後5年間は先代と並走しながら営業と渉外を中心に業務を行っていました。

高田さん「100人以下の中小企業なので、人事・総務・労務など多岐に渡ってやっていましたね。承継前に先代と伴走しながら働けたことは非常に幸運だったと思います。考え方や人との付き合い方など、言語化できるところとできないところがあるじゃないですか。先代と一緒に伴走できたからこそ言語化できない部分を身を以て学べました。幼い頃から経営や思想の話を聞いていたおかげで、同じ視座で話し合いができたことも良かったです」

聖火ランナーとして走る日に事業承継をすることに

虎屋本舗に入社して7年目の2020年。従業員が集まる定例会で、高田さんが「TOKYOオリンピック聖火ランナー」として走ることがサプライズで発表されました。さらに、聖火ランナーとして走る当日、事業承継が行われることも公表されて大変驚いたと高田さんは言います。

聖火ランナーは一般応募されており、求める聖火ランナー像が”「地域の希望の光」となる人”でした。会社が目指す方向一致していたこと、さらに事業承継に話題性を持たせるために先代が水面化で進めていたそうです。発表当日は色々なメディアの取材が入り、記事やネットCMも作成され話題になりました。

承継はコロナの影響もあり1年ほど延期になっていましたが、無事2021年5月18日に代表取締役社長に就任することができました。

経営者としての役割を担うために

高田さん「社長に就任してからは時間の使い方も変化がありました。付き合いが増えることも要因の一つですが、いつまでも以前のようにプレーヤーでいては会社の成長はないなと。他の人に任せれるところは任せて、私は経営者として新しい時間の使い方をしていかなければならないと考えています」

広い視野で経営を学ぶためにMBAも取得しました。経営の知識を得たのはもちろんのこと、全国に同じような経営者との繋がりができたことがモチベーションにつながったそうです。また、異業種で働いていたことも強みとして生かせていると言います。

高田さん「一昔前だと同業種の大きい企業で経験して家業に戻ることが多かったと思いますが、最近は異業種で学ぶ人も増えています。大きく革変していくためには既存ビジネスだけでなく、新しい情報や経営を取り入れていくのも一つの手段だと感じています」

変化に適応していくのではなく、変化を作り出していくビジネスを

先代が経営していた頃は、商品を沢山作れば売れていましたが、昨今は商品を大量に作ったところで売れない時代になりました。

高田さん「弊社のような、中間業者を介さず直接お客様に商売をしているところは、お客様の文化や行動が変わると大きな影響を受けます。中小企業は両輪経営をしないといけないと考えています。今までの飯の種をもちつつ、新しいマーケットを作っていかないといけない。この飯の種が今後20年30年続くとも限らない。両方の側面を持たないといけないのであれば、どうしたらいいか。この二面性を持った組織をどう作り上げていくか、人をどう育てていくかが一番の課題だと感じています」

現在抱えている課題を解決するために、『変化に適応していくのではなく、変化を作り出していくビジネスに挑戦していきたい』と、高田さんは語ります。

高田さん「東京で流行っているものを地方で真似して売れば、ある程度は売れるんです。だけど、地方にはここでしか作れないものとか、ここでしかできない商売って絶対にあると思うんです。地方には地方ならではの豊富な資源があるので、ここでしか作れない商品や、商売にチャレンジして、職人さんたちと一緒に取り組んでいくと、課題解決につながるのではないかと考えています」

「商人の売買するは天下の相なり」

虎屋創業の精神として「商人道十訓」があります。高田さんはその中の一つ「商人の売買するは天下の相なり」から影響を受けているといいます。

高田さん「日本の経営理念思想である『何をもって商いとするか』という考え方です。これからの時代、商品を販売するだけでは持続できません。昔のように定番のお供え菓子を買って、お供えをする文化は少なくなっています。今は映える商品が購入される傾向にありますが、ブランドや流行りのサイクルが早いんです。そのため、商品をただ販売するだけでなく、これからは文化を商いにしていかなければならないと考えています。見せ方を工夫してストーリー性のあるお菓子として打ち出さないといけないと思っていて。そのために様々な企画を打ち出しています」

最近の新しい取り組みとして地元のパン屋さんとコラボレーションして『あん食パン』を販売しているそうです。包装は特産のデニムバックを取り入れるなど、文化性とストーリーのある商売を実施されています。

その他にも、せとうち和菓子キャラバン・高齢者活躍ダイバーシティ・せとうちパートナーシップなどのSDGs事業にも力を入れて取り組んでいます。

文化を商いとして今後100年続く土壌作り

現在、新しい取り組みとして『新しい形の専門店』を作る計画を練っています。

高田さん「手土産を買うだけでなく、地元の人たちがお店で料理教室とか茶道・華道をやったりとかして、人が集まるハブになるような専門店を作りたいと考えています。国産のワインや国産のチーズ・バターを少し取り扱い、オープンキッチンも設備して、元来の和菓子店とは異なる形のお店作りにも挑戦したいですね」

400年続いてきたこのお店を、さらに100年以上続くような土壌を作りたいと高田さんはいいます。

高田さん「400年も続いているお店となると、持続することが美しいと思われることが多いのですが、必要とされる企業であり続けるためには、経済性も持つ必要があると思います。『道徳なき経済は罪悪であり 経済なき道徳は寝言である』という言葉があるように、信念を持って経営するためには、しっかり売り上げも出していく必要があると考えます。そのために文化を商いとしながら、ユニークな商品開発、地域共存型経営ができるようこれから頑張っていきたいです」

これまでの歴史の中にも幾度となく壁が立ちはだかり、革新をしてここまでバトンは繋がれてきました。そして、これからは高田さんが新たな虎屋本舗の歴史を刻んでいきます。新しい時代の虎屋本舗がどんな企業になり未来へ繋げていくのか、今後がとても楽しみです。

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