事業承継ストーリー

人との出会いが道をひらいた。「鳥取県お試し訪問ツアー」から始まる事業承継

鳥取県大山町・大山寺エリア。雪深い冬と、豊かな自然に包まれるこの土地で、長年親しまれてきたカフェがあります。寺院所有の建物を活用したこのカフェは、観光客や地域の人が行き交う中で、穏やかな時間を重ねてきました。

このカフェを、今年春から新たに引き継ぐことになったのは、千葉を拠点に日本語教師として活動していた新井宗幸さんです。

「最初から“この店を継ごう”と思っていたわけではないんです」

そう話す新井さん。なぜこのカフェを継ぐという決断に至ったのか。大山町と出会ったきっかけや、事業承継の背景、そして今後の展望についてお話を伺いました。

承継者:新井宗幸様(写真右から3人目)

聞き手:relay編集部

通う中で、少しずつ近づいた大山町という場所

 ―(聞き手)relay編集部(以下、略):今回の承継のきっかけとなったのは、鳥取県とrelayが開催した「とっとりお試し訪問ツアー(※)」とのことですが、参加した経緯について教えてください。

※とっとりお試し訪問ツアー:鳥取県の後継者募集事業者訪問や事業承継経験者、移住経験者との意見交換を通し、鳥取県での事業承継や起業後の事業展開イメージをより具現化することができる一泊二日の現地体験型ツアー(主催:鳥取県、運営:relay)

(語り手)新井宗幸様(以下、敬称略):もともと「自分で何かやってみたい」という気持ちはあったんです。でも、ゼロから起業する勇気はなくて。「誰かから教えてもらいながらだったら挑戦できるかもしれない」と思って、鳥取県が主催していたrelayのツアーに参加しました。そのツアーの中で出会ったのが、鳥取県で実際に事業を営んでいる起業家の方々でした。

 —起業家の方々と参加者の交流会は、質疑応答も活発に行われていたそうですね。

新井:はい。特に合同会社sunsunto 代表社員の佐々木正志さん(通称:マーシーさん)のお話は印象的でした。マーシーさんは東京から地域おこし協力隊として鳥取県大山町に移住し、特産の芝を生かしたキャンプ場の運営や、クラウドファンディング支援など、地域とともに事業を展開している起業家です。マーシーさんの話を聞いて、「こういう形で地域と関わりながら事業をしている人がいるんだ」と興味がわきました。

 —実体験を聞くとよりイメージがわきますよね。ツアー後、大山町とはどのように関わっていったのでしょうか。

新井:ワーキングホリデー制度を活用し、短期滞在という形で大山町に通うようになりました。有機農業の現場、観光農園など、様々な場所でアルバイトをしました。特定の技術を学ぶというよりも、意識して「人に会うこと」を重ねていった感じですね。

「おにぎりくん」の愛称で親しまれている、小橋俊哉さんとの出会いもとても大きかったです。小橋さんは和歌山県出身で、大学進学をきっかけに鳥取県に惚れ込み、在学中に「おむすび屋ひとむすび」を立ち上げた若手起業家なのですが、彼も自分のスタイルで事業を営んでいて魅力的です。

イベントにも声をかけてくれたり、人をつないでくれたりと、自然と関わりが増えていきました。

 —「人に会う」ことを続けることで、新井さんも地域の人との関係が少しずつ広がっていったんですね。

新井:履歴書がなくても、地域のつながりの中で仕事をもらえる環境がありがたいなと感じていました。実は、一度別の場所で住み込みの仕事に挑戦してみたものの、あまりフィットしなくて…相性ってあるんだなと感じましたね。

その後も大山町でイベント出店を手伝ったり、定期的に関係を続けていました。ツアー以降、大山町から完全に離れたことはなかったですね。

一度は大山町での起業を諦めて千葉に戻ることにしましたが、おにぎりくんやまーしーさんが何度も連絡をくれ、もう一度鳥取に戻るきっかけをつくってくれました。自分のことを気にかけてくれる人がいることが本当にありがたかったです。

「ひとりだったら、やっていなかった」

 ―今回のカフェの事業承継の話は、何がきっかけだったのでしょうか。

新井:去年の夏頃に前のオーナーさんが次の人を探していると聞いて、話を聞きに行きました。大山寺エリアの寺院所有の建物を活用したカフェなんですけど、実際に場所を見て、「あ、ここ好きだな」と思いました。

 ―ピンときたんですね。承継を決めた一番の理由は何だったのでしょうか。

新井:正直に言うと、ひとりだったらやっていなかったと思います。でも、周りにマーシーさんや、おにぎりさんなど、挑戦している人がいる。「その人たちがいるなら、できるかもしれない」と思えました。

もちろん不安はあったんですが、これまで大山町のみなさんと関係を続けてきたからこそ、孤独ではないと思えましたし、一歩踏み出す勇気がでました。

 ―現在は4月のオープンに向けて準備中とのことですが、今の率直な気持ちはいかがですか。

新井:やっぱり不安の方が大きいですね(笑)。今はまだ収入がなくて、出ていくお金の方が多いので…「移住した」ともまだ思っていません、4月からが本番です。地域で暮らすことの理想と現実、期待と不安、両面を実感しながら日々準備を進めています。

「人が集まり、語らう場所」へ

 ―今後、このカフェをどのようなお店にしていきたいと考えていますか。

新井:まずは無理なく続けられる形にしたいです。キッチンが広くて、ひとりでやるには正直大変なので、カウンター中心にするなど工夫を考えています。

屋号については、前オーナーが築いてきた歴史を尊重しつつ、慎重に検討している段階です。昔のイメージで来られて「違った」と思われるのは避けたい。でも、新しくなったことを前向きに受け取ってもらえたらうれしいですね。

僕は日本語教師としても活動しているので、このカフェを日本語を教える拠点にもできたらいいなと思っています。それから、このカフェから見える冬の景色が本当にきれいなので、宿のように人が集まれる場所にもできたらいいな、と。

カフェという枠を越えて、「人が集まり、語らう場所」にしていきたいですね。

地域との関係の中で生まれた承継

今回の承継は、最初から決まっていた話ではありませんでした。

鳥取県が主催したrelayのツアーをきっかけに大山町を訪れ、その後も短期滞在という形で関わりを続けてきた新井さん。何度も通う中で、地域の人との関係が築かれていきました。

事業承継は、条件や設備だけで成立するものではありません。
「この人なら」「この場所でなら」、その思いが最後の一歩を後押しすることもあります。前オーナーが16年続けてきたカフェは、春から新井さんの手で新たにスタートします。

大山という土地で、人とのつながりの中から生まれた今回の承継。これからどのように形づくられていくのか、地域にとってもひとつの新しい試みになりそうです。

「とっとりお試し訪問ツアー」開催レポートはこちら:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000350.000053134.html

この記事をシェアする

事業承継情報をお届けする
メールマガジンを登録しませんか?

公募案件のご案内や事業承継の事例インタビューなど、
relayならではの最新情報をお届けします。お気軽にご登録ください!

利用規約 および プライバシーポリシー に同意する

後継者をお探しの方へ

relay なら、事業主さまの想いを大切に、安心して後継者探しができるよう、 募集から成約までを秘密厳守で全面サポートいたします。

詳しく見る
succession-logo