
北海道釧路市のイオンモール釧路昭和にある「Cafe&Grill ROKA」。25年にわたり地域の人々に愛され続けたこのお店が、2025年2月に事業承継され、新しいオーナーへとバトンが引き継がれました。店名の由来は、創業者の大坂さんご夫妻が東京・芦花(ろか)公園の近くに住んでいたことから名付けたもの。事業承継後も屋号はそのままに、長年培われた味とおもてなしの精神を守りつつ、新たなオーナーの手によって次のステージへと進んでいます。
今回、「Cafe&Grill ROKA」の譲渡者である大坂年明さんと琴奈さんご夫妻に事業承継を考えるようになったきっかけや実際に事業承継が完了するまでのお話について伺いました。また、これからの「Cafe&Grill ROKA」について、従業員のお二人にも話をお聞きました。
譲渡者: 大坂年明様・琴奈様
従業員:石田加奈絵様、蝦名(えびな)唯花様
聞き手: relay編集部
ーー(聞き手)relay編集部(以下、略):事業承継を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか?
(譲渡者)大坂琴奈様(以下、敬称略):やっぱり年齢的な部分は大きかったです。いつまでも元気でいれるわけではないですし、夫は私の15歳年上なので楽にしてあげたい気持ちもありました。コロナ前から事業承継を考えていて、社内での承継も視野に入れていたので従業員にも話はしてたんです。
relayのパンフレットを見て、ネットから問い合わせ
大坂琴奈:後継者募集の始まりは、私がイオンのマネージャーさんに相談したことからです。そこから釧路市ビジネスサポートセンター「k-Biz」や北海道事業承継・引継ぎ支援センターを紹介してもらいました。「k-Biz」は中小企業や個人事業主、創業希望者を支援してくださる無料の相談所です。その後、センターの方から「こういうサービスもあるよ」と渡してもらったパンフレットがrelayでした。1ヶ月ほどで取材から募集記事作成まで行って頂きましたね。
募集記事はこちら:https://relay.town/entrustments/cafegrillroka
ーーどうしてrelayで事業承継の募集を決めたのでしょうか?
大坂琴奈:1番はお問合せしやすかったことです。パンフレットをもらった後にネットから簡単にお問合せができましたし、すぐに電話でヒアリングもしてくださいました。
事業承継を支援してくださる機関はたくさんあるので、色々な所を頼った方が良いと思います。ただ事業承継の相談をすることにハードルを感じる方も多くいるはずです。まずは一度relayのような所に相談して、一歩踏み出してみると良いかもしれませんね。
https://relay.town/succession
ーー実際にrelayのサービスを使ってみてどうでしたか?
大坂琴奈:そもそも後継者を募集していることを色んな方にオープンにしていたので、募集記事を出すことにも抵抗はありませんでした。実際にrelayの紹介で2名の方が現地までお話に来てくださって、その中の1名が今の新しいオーナーです。
実はXでも後継者募集の案内を出していたんです。ただSNSを通じて応募してくださる方とはなかなかお話が合わず、やっぱり第三者の方に間に入ってもらう重要性は感じましたね。新オーナーとのマッチング後は、「k-Biz」や北海道事業承継・引継ぎ支援センターの方もサポートしてくださり、無事に事業承継を完了することができました。
新しい「Cafe&Grill ROKA」を支える、レシピと従業員の承継
ーー年明さんが料理の指導をしているそうですが、順調ですか?
(譲渡者)大坂年明様:毎日ではないですが、最初のうちは私も厨房に入って料理を指導しています。完全に任せられるまではもう少し時間が掛かるかもしれませんが、少しずつ覚えてくれています。
大坂琴奈:料理の指導は夫が頑張ってくれています。実は、事業承継するにあたってメニューも大幅に減らしたんです。やっぱり「後継者の負担が少ないように」というのは意識していて、残っていた厨房設備のリース契約は引き継いでもらいましたがその他は無償で譲渡しました。
夫がずっと厨房担当だったので特にレシピを作っておらず属人化していた部分もありました。これでは料理の承継をする時に苦労すると思い、承継の日までに当店人気のミートソースなども含めレシピの作成をしたんです。
ーー今回の事業承継では従業員の方々も引き継がれたとお伺いしてます
大坂琴奈:そうなんです。従業員も経営者が変わるという事で不安な部分もあるかと思いますが、今もお店を支えてくれていて、とても感謝しています。15年以上一緒に勤務してきた従業員もいて、常連のお客様からも「あの子がいるならこれからもお店に来れる」という声を頂いています。
実は、新しく入ってくれた厨房担当の方は元々同じイオンの別の飲食店で勤務していた方なんです。従業員とも既に面識があり、一緒に頑張ってくれています。
お客さまにとってはいつまでも変わらないお店へ
ーー大坂さんと従業員のお二人にお聞きします、これからどんなお店になってほしいですか?
大坂琴奈:これからはできるだけお店には行かず、後継者の経営方針に任せるつもりです。気付いた事はアドバイスしていきたい気持ちももちろんありますが、後継者が自分で考えて経営に向き合い、試行錯誤しながらお店を成長させてほしいですね。
(従業員)蝦名唯花様:これまで大坂さんから厳しくも愛のあるアドバイスをたくさん頂きました。常にお客様のことを気にかけている姿も間近で見てきたので、これからも教わったことを忘れずにお客様を大切にしていきたいです。
(従業員)石田加奈絵様:これからもずっと変わらないお店にしていきたいです。創業者である大坂さんご夫妻の想いは確実に従業員達に受け継がれているので、良い意味でこのままのお店であり続けたいですね。

大廃業時代到来、市全体で取り組むべき事業承継
ーー大坂さんの周りでも廃業される方が増えてきたそうですね?
大坂琴奈:そうですね。モール内のレストランも昨年廃業しまして、近所の蕎麦屋でもそういった話が上がっています。経営者の高齢化が大きな要因だと思いますが、なかなか相談しづらいというのもあるはずです。
最初にも話しましたが、まずは1歩踏み出して相談してみる事だと思います。最近開設された「relay the local 釧路市」にも期待していますよ。事業者だけが頭を悩ませるのではなく、自治体や各支援機関など市全体で取り組むべき重要な課題だと思います。
ーー「これからは実家に帰ったり、旅行もしたい」と語る大坂さんご夫妻。25年もの間、愛情を注いできたお店を後継者に託し、第二の人生を歩み始めました。