自然豊かで、宮崎県との県境に位置しているあさぎり町は、熊本県南部、球磨盆地の中央に位置しています。寒暖差が大きい秋から冬にかけてかかる朝の幻想的な霧が美しいことが名前の由来とされ、盆地特有の寒暖差を活かした農作物の収穫も多く、飲食店を中心とした商工業も盛んな地域です。
一方で、若年者を含む全体就業者数が減少。農業後継者の育成や企業誘致等の雇用対策による就業人口の確保が課題となっています。
2023年relayとして熊本県初となった連携協定を推進した北口町長に、まちの課題やrelayとの取り組みについてお話を伺いました。
話し手:あさぎり町長 北口俊朗様
聞き手:relay編集部
自然の恩恵を享受。しあわせ感じるまち、あさぎり
──(聞き手)relay編集部(以下、略):さっそくですが、まずはあさぎり町の特徴を教えてください。
北口町長:あさぎり町は平成15年の平成の大合併で、上、岡原、須恵、深田、免田の中球磨5町村が合併して誕生した熊本県内で第一号の町です。自然豊かで、子育てしやすい環境なので、移住者にもおすすめです。
観光スポットとしては、日本七薬師の一つに挙げられる谷水薬師があります。紅葉時に写真を撮りに来る観光客も多く、メディアにもよく取り上げられているスポットとなっています。また、1,417mの白髪岳(しらがたけ)は登山客に人気があります。頂上には霧島連山が見えるし、雲海も見えて写真スポットとしても非常におすすめです。
ほかにも、あさぎり町内にあるおかどめ幸福駅は、台湾の新北メトロの幸福駅と幸福つながりで協定を結んできました。先方は400万人の人口なので規模は異なりますが、幸福を願う気持ちは同じですからね。
人口が減少しているなかで期待するのは、新しい事業承継のかたち
──あさぎり町における事業承継問題について教えてください。
現在のあさぎり町の基幹産業は農業です。漢方の原材料となっているミシマサイコを栽培していて、大手薬品メーカーの株式会社ツムラと協定を結んでいます。葉タバコはJTと直接契約して全国でも5本指に入る生産地となっているほどです。JTは生産する場所を限定しているために、生産者も安定した運営を行っており、葉タバコの農家に関しても後継者の問題は今のところ顕在化していません。
ただ、農業全体で考えると従事者が70歳以上の高齢者の方も増え、今後は現在の半分くらいの従事者に減少するとも言われていますので、事業承継はあさぎり町にとって、重要な役割を担っていくと考えています。
──relayでは通常の事業承継の範囲だけに限らず、オーナーの意向次第で幅広い視点での事業承継を進めています。そうしたrelayを今回なぜ選んでいただけたのでしょうか。
私はもともと商工観光課におりましたので、商工業で担い手がいないという課題に対して何かしなくてはという考えは以前からありました。
あさぎり町としてもこれまで事業承継問題に取り組んできましたが、今までのやり方に加えて、これまでとは異なる方法・幅広い視点で事業承継を進めているrelayに期待したいと思って連携協定を締結しました。
移住施策とも連携し、新しいことがどんどん生まれる町になって欲しい
──今後は事業承継をどのように推進していこうと考えていますか。
事業承継に関して重要なのは、事業者一人ひとりの考え方だと思っています。事業を残したいという気持ちが強ければ承継へのプロセスも進みやすいと思いますが、一方で負債や経営理念の承継には難しい面もあるだろうと思います。
ただそのなかでも、新しい人が今の市場にマッチさせて事業をより発展させていくということも期待できますし、起業する際に事業承継で初期コストを抑えるといった考え方も広まっていくと町全体の活性化にもつながります。
──事業だけではなく、コミュニティが存続される役割も大きそうですね。そういった観点ではいかがでしょう。
なかなか地元に帰りたいけど仕事が見つけにくいとか、戻ってきてもコミュニティに入りづらいとか考えている人もいますが、事業を受け継ぐことによって、周りのサポートも受けやすくなるという観点からも移住施策とともに連携して取り組んでいける部分かと思います。
人口減少や少子高齢化、物価高騰、それらが及ぼすところに後継者不足、人材不足、働き方改革、デジタル化の推進などがありますが、若い方が入って事業承継のタイミングで新しいことが生まれるのを期待したいですね。
エネルギッシュに活動している若い人たちもたくさんいますから。若い世代の方々がこれからの時代を支えていくと思っています。
居抜きや機材譲渡など、いろいろな選択肢を用意し事業者をサポートしていきたい
──最後に事業承継に関するメッセージをお願いします。
あさぎり町の商工業関係の補助金はいろいろなメニューを揃えておりますので、まずはご相談いただきたいですね。そのためにも、我々は事業承継に対する意識啓発・啓蒙を引き続き行なっていきます。
熊本県内で連携できたのはあさぎり町が初めてなので、早く成功事例を出して実績をつくり、周辺地域にも横展開していきたいと考えています。
これからも、あさぎり町とともに事業者の皆さんに寄り添った継続的な伴走支援で事業承継をサポートしていきますので、よろしくお願いします。
──今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
(relay編集部)