「この店は地域の生命線」北海道・平取町貫気別地区で細川商店を引き継ぐ人を募集
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北海道平取町(びらとりちょう)は、「豊かな自然とアイヌ文化が息づく二風谷(にぶたに)のある町」として知られています。町には日高山脈を源とした清流「沙流川(さるがわ)」が流れ、肥沃な大地では、全国に名高い「びらとり和牛」や「びらとり黒豚」の生産、北海道一の出荷量を誇るびらとりトマト「ニシパの恋人」の栽培、サラブレットの育成など、自然を活かした様々な取り組みが行われています。
中心地から車で約30分の「貫気別(ぬきべつ)地区」にある「細川商店」は、数少ない食料品や日用品を販売する店として、地域の生命線を担ってきました。夫婦で切り盛りしていますが、高齢による負担が大きいことから、引き継いでくれる方を募集しています。
父親の後を継いで商店を経営
国道237号と静内(新ひだか町)を結ぶ道道71号の途中に貫気別地区があります。現在は静かな集落ですが、すでに廃校となった中学校はとても大きく、多くの人が住んでいた街であったことがわかります。細川商店は道路沿いにあり、かつては商店街が形成されていました。
細川商店は、昭和中期に店主である細川幸夫さんの父が創業しました。最初は農業の傍ら、豆腐や飴などを作って行商のようなことをしていましたが、次第に食料品や日常品を販売する形態になったそうです。
幸夫さん「父親は商売よりも農業の方が好きだったようで、高校を卒業してすぐに店を継ぎました。私は客商売が性に合っていたようです」
昭和50年代頃まで細川商店のまわりには10店舗ほど店が連なっていましたが、廃業が続き、現在営業しているのは数件だけ。貫気別地区の人口は300人ほどで、そのほとんどが高齢者だといいます。
幸夫さん「平取町の人口は最盛期に1万6000人もいましたが、今では4600人に減少しています。一人暮らしが難しくなって、都会に住む子供達の元に身を寄せたり、老人ホームなどに入る人が多くなるなど、徐々に人が少なくなっていきました」
何でもそろう昔ながらの万屋(よろずや)
細川商店は地域のニーズに応えて、不定休で毎日朝6時30分から夜7時まで営業しています。それ以外に、夜遅くに必需品を買いに来る人のために店を開けることもあるそう。
幸夫さん「一日のお客さんは多い時で30人くらい。このあたりに店がないので、地元の方だけでなく、道道71号を走るドライバーなどが立ち寄ってくれます。特に売れているのは飲み物類で、そのほかは惣菜も人気です」
奥には厨房設備があり、店内で惣菜を手作りすることもあるそうです。お店を見渡すと、食料品や日用品はもちろん、ノートなどの学童用品、クリーニングの取り次ぎ、獣除け用の爆竹もあるなど品ぞろえ豊富。以前は衣類や靴も扱っていました。
地域の高齢化とともに店主夫婦も高齢に
細川さんご夫婦も70代半ばになり、身体の負担が大きくなったと言います。遠方のお客さんのために配達も行うなど、仕事を続けることは容易ではありません。
幸夫さん「毎朝、4時に起きて1時間以上かけて仕入れに行っています。道路が渇いている季節はいいですが、凍結する冬は大変です。もう運転が辛く感じています」
奥さんの幸子さんは、3、4年前から廃業が頭にちらついていたと言います。近年、店を手伝ってくれていた幸夫さんの妹さんが他界し、幸夫さんも夫婦二人だけで経営する限界を感じたそうです。
幼稚園児の一言を受けて店を残すことを決意
車を運転できない高齢者にとって、細川商店はライフラインそのもの。この店が無くなってしまうと、醤油一つ切れても本数の少ないバスに揺られて、中心部まで買い物に行かなくてはなりません。近くで行われていたダム工事が終わり、次々と関係者が撤退する中で、幸子さんは幼稚園児から言われた一言が胸に刺さったと言います。
幸子さん「おじいちゃんから聞いたんだけど、ダム工事が終わったらお店がなくなっちゃうんですか?と言われました。『ちがうよ』と言うと、『あーよかった』と笑顔で言ってくれました。この店を閉めることで地域の方々が困ることは痛いほど分かっていますし、ここで暮らし続ける私たちも困ります。元気でお手伝いできるうちに誰かに引き継いでほしいと思っています」
譲渡内容は、二階建ての店舗兼物件と周囲の土地すべて。飲食店を併設してもコンビニエンスストアにしても構いません。地域密着型の商店として、以前は店舗内の一室にカラオケ機器を設置して社交場にしたり、敷地内で焼肉パーティーを開いていたそうです。
静かな貫気別地区で、地域に必要とされる商店を長期的に経営できる方を求めています。年齢、性別、経験は問いません。興味がある方は平取町を訪れて話を聞いてみませんか。
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