「あそこに行けば皆に会える」そんな交流の場となる飲食店を開きたい

二足のわらじで地域ににぎわいを

生まれも育ちも鳥取県南部町の長谷川さん。

長谷川さんは現在、生命保険に関するお仕事と並行して、3年前から町の公共施設である食品加工場の利用者として味噌やお餅の加工をしています。また、加工場を使った主催のイベントとして、地域の方々が参加するパン作りの行事を定期的に開催しています。

自分の名前でイベントの告知をすると「やっぱり由香ちゃんか」と皆さんから声を掛けてもらえると語る長谷川さん。地元だからこそ、提供できる価値や安心感があると話します。

「今パン作りの場を運営していて、地域の方が集まるコミュニティの場となっていることに大きなやりがいを感じています。これを仕事にしたいという気持ちです。今やっている加工や販売をこのままもう少し大きくできれば良いのですが、小さな町なので仕方ない部分もあるかなと思っています」

地域の方が育ててきた事業を繋ぎたい

商品加工の経験があったわけではなく、趣味の延長線上でパン作りの場の提供を始めるなど、アクティブに活動をされている長谷川さん。

このパン作りに来るおばちゃんたちからもよく聞く「あそこはあとを継ぐ人がいないから廃業するらしい」「あそこはもうお店を閉めたらしいよ」という話に対して、今まで大切にされてきた事業をもっと大事にしていけたらいいのにな、と思っていたといいます。

「生命保険も食品加工も自分の仕事ですが、この先は自分でやりたい、自分の裁量で決められる仕事をしたいと思っています。わがままかもしれないですが、自分で人を呼び、自分で事業を大きくしてみたいです。何でも自分でできるって、とても素敵ですよね」

SNSでパン作りイベントのお知らせをするなど、地域の中心となって人が集う場所を提供されているそう。自分で「こうしてみたらどうだろう」と考え、実行するのが好きだと長谷川さんは語ります。

「もうひとつ、夫と一緒に働きたいという理由もあります。夫は12歳上で、会社員ですが外での作業が多いので、夏は暑く冬は寒いので大変なんです。子供2人も成人しているので、この機会に一緒に働けたら最高だと思っています」

友人に会える交流の場となるお店へ

パン作りは様々な年齢層の方々がたくさん来られ、楽しまれているそうです。地域の方の居場所になる飲食店を持てたらいいと長谷川さんは語ります。

「皆さん個人でパンを作りに来られますが、結局皆さん仲良くなるんです。今後開くお店が“ここに行くとあの人に会える”という、皆さんにとっての好きな場所になってほしいです」

現在、パン作りをおこなっている施設も、加工場であるとともに地域交流拠点としての役割も担っているといいます。とはいえ、公共の施設なので使い方には制限もあるからこそ、自分のお店が今と同じように交流の場になれば嬉しいなと語ります。

南部町近くで理想的な条件のお店があればいいのですが、お店自体が少ない地域のため少しエリアを広げて現在探されています。

事業承継は人の繋がりを引き継げる

「お客さんや仕入先など、人の繋がりを引き継いでもいいと思ってくれる譲り手さんに出会えると嬉しいですね。また、知らない人がいきなり引き継ぐよりも“私は仕事を辞めるけど、ここで同じように続けてくれる人が来るんだ”とお客さんに話してもらえるとありがたいなと思います」

「パン作りに来てくれる方々が知り合いをたくさん誘って来てくれるんです。事業承継によってお店を持つ夢が叶ったら、その方々にも広めてもらえると嬉しいですね」

今回の取材を通して、長谷川さんの、地域やコミュニティづくり、事業承継に対する熱い思いが伝わってきました。「とっとり×後継ぎリノベーター」プロジェクトを通じてマッチングが実現し、ひいてはそれがまちの活性化に繋がっていくことを心から願っています。

（執筆：2024年3月）